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黒い本
沢山の本が並んだ本棚は、まるで私を待っていたかのようにソワソワとし始めた。とは言っても、実際に動いているわけではなくイメージだ。
本棚はとにかく高くて大きい。
だからあちらこちらに脚立が置かれていて、意外にじゃまだ。
私は暗い本棚と本棚の間の通路を、途中置いてある脚立を避けながら歩いていった。
どんな本を読もうか考えながら奥へ奥へ進んでいく。
いつもなら広すぎて長い通路を一番置くまで行くことはない、と言うかどんなに進んでも終わりがないんじゃないかとたまに思う。
というのは少し盛りすぎだが、とうとう私は通路の一番置くまでたどり着いた。
そこは暗い上に人が誰もいない、不気味でしか無いのだ。
真っ白い壁に私は手を当てて、目を瞑る。
そうすると聞こえてくるんだ…本たちの話し声が。
カタンッ、グィイイー
「何?」
急に壁横にあった本棚の一部が動き出す。
ガタガタガタガタガタガタ…カチンッ
歯車が回る音が聞こえて、しばらくすると止まった。
そして本棚の影から現れたものはレバーだった。
ほんの好奇心だった
私はそのレバーに手を伸ばすと、ゆっくりと下へ___
ギィィィ
突然目の前の白い壁から扉が現れた。
「何これ」
どんな仕掛けになっているのかはさっぱりわからないけれど、確かにそこには扉があった。
私は生唾を飲むと、ゆっくりと扉へ手をかけた。
何か不気味なBGM、くるみ割り人形の金平糖の踊りなんかが流れそうな雰囲気の中、私が見たものは真っ黒い本が並んだ本棚だった。
すべて背表紙に何も書いてなくて、中を開いてみないとなんの本かわからない。
私は目の前にある一冊の本を手に取った…
「読んでみようかな」
とりあえずかばんの中に本をしまうと私は扉を閉め、レバーを上に上げ今は扉の消えた真っ白い壁を背に、長い通路を戻っていった。
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