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第二話 映画館
しばらく行くと大きな鳥居。
へー、こんなところに神社、あったっけ?まあいいか、ちょっと行ってみるか?
本当に神社なんかあるのかよというような、家と家の細い間を通っていく。両脇には神社の名前の紺色ののぼりが何本もたっている。
マジ?なんだかな?戻ろうかな?
そう思っていたら、ポンと広い空間に飛び出た。
あ、神社。
キツネだ?
お稲荷さん?
何の神様かな?
でもなんだか結構人がいるな。
スマホを見るとそろそろ十時になる、九時五十八分、二時間以上歩いてきた。
猫?どこだろう?
とにかく参拝でもするか。
財布から五円玉を出した。
「いいご縁がありますように、それとこの先幸せでありますように…なあ、神様、いるのなら前言撤回、この先一人で生きなくてもいいようにしてくれねーかな、なんかさみしくてさ・・・」
フーとため息のような声が出た。
「まじで、神様、お願い、人のぬくもり感じてみたいんです、お願いします」
確か、住所と名前というんだよな。
心の中で、念じた。念じるもんじゃねえけどな。
さて、帰ろうかな?
後ろを見ると、境内の中がぐるりと見渡せた。
人がぞろぞろ同じ方へ行く?何があるのだろう?
「あ、猫?」
走り出した、その人たちの波にのり、猫は建物の中に入って行ってしまった。
看板が立っている、映画?建物を見上げた。
へー、映画館だ、古いなー。
入り口は、黙っていれば通り過ぎそうな小さなもの、映画は?
君の未来?
君の名は?じゃねえの?なんだろう自主映画かな?
値段を見た。
え?
目をごしごし。
電光掲示板?が頭の上にある、それを見てお金を払っているのだ。
入っていく人たち、まるで品定めをするように、人の前で値段が変わる、いや変わっている?
また眼をこすった。
若い男女ペア、千五百円?まあ妥当だな?
その後ろ、どう見ても七十過ぎの爺さん。
二百円?
その次は、おやじぐらいの人。
は?一万?
あ、帰る。
出て行く人もいるんだ。
一万円は一人だったけど、金額は二百円から三千円、なんだか俺も行ったらどんな金額が出るのか、興味がわいた。
財布を確認、千五百円までだな。
入り口に行くと、おばあさんが一人、入場券売り場にいた。
「いらっしゃい」
「中学生一人」
「過去、現在、未来どれがいい?」
どれ?と言われても、素直に聞いた。
「お金、これしかなくて」
それを見たおばあさん。
「過去か現在だな」
そういった。
過去か、俺は、現在といった。
「七百円、三百円のお返し、二番に入りな」
券をもらい、中へ入った。
過去はいい思い出がない、この先変わるわけでもないし、だったら今がいいと素直に思ったんだ、
入り口の側には売店があり、初めて映画館に入った俺は辺りをきょろきょろ。
でも次のお客さんが来てそれが少しわかったような気がした。
母さんより少し年上に見えた女性が過去といった、すると頭の掲示板が千円と出たんだ。千円?じゃあ未来。そういうと金額は五千円になった。
噓、そんなお金ないわというとおばあさんがじゃあ現在にしてみるかと言った、すると千五百円、女性は過去の千円を渋々払って入ってきた。
その後ろからはヤンキーっぽい男性。躊躇なく未来というと、三千円と言った、パンと払い券をもらって中へ入ってくると、まっすぐ売店へ。女性はコーヒーと言っていた。何らコンビニと変わらないコーヒーを手に中へ入っていく。
若い客は、ポップコーンとコーラを手に階段を上がっていった。
二番って言ってたな、階段の手すりに、偶数は二階と書かれていた。
俺もコーラを買おう。
「コーラ一つ下さい」
百五十円、普通かな?大きな紙コップには赤い色に白抜きの文字、クラッシュアイス、それにコーラが入った。それを手に二階へ上がっていく。
二番、二番。
数字を頼りにドアの上を見上げる。
ダークブラウンの扉には、黒っぽい赤い皮が貼ってある。どこかの劇場みたいなドアだな?
何枚もドアがあり、不思議な感じでそのドアを開けた。
へー、なんだ明るいな。
まだ上映前、人が座席に座る姿が見える。
ここでいいか。
ドアから入ると下に伸びる階段、階段を二つほど降りて端の椅子に座った。
番号なんて関係ないじゃん、そう思った。
だって入ってきた人たちは違う番号から入ってくるけど、同じ空間だし、おかしいの?
そう思ったんだ。
コーラをゴクリ、カバンを隣の空いている椅子に置いた。
ビーーー。
ブザーの音がすると、若い女性の声で、携帯電話をお切りくださいというアナウンス。
やべ、マナーモードじゃなくて切った。
だんだん薄暗くなりはじめた。
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