神様はタダじゃ動かない!

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「神様、一生のお願い!」 「神様~、どうかよろしくお願いします。」 「助けてください、神様!」 「HEY!GOD!please!please!」 カシャン!カシャン!カシャン!… 神の星では、今日も神様へのお願い事がひっきりなしに世界中から届いている。 カシャン!カシャン!カシャン!… そのお願い事は、瞬時に紙に印刷され、機械から排出される。カシャン!という印刷機の音は止むことはない。 一言で神様といっても、色々な神様がいる。地球人の願い事を叶えてくれる神様は一人ではないのだ。それは願い事の種類によって違ってくる。だから、届いた願い事は仕分けをする必要があるのだ。 仕分け係のミクトは、神様歴2年の新米で、研修期間を終えて漸く一人前の仕事を任せられていた。秒単位で印刷されていく願い事を瞬時に判断し、108つある籠に仕分けるのがミクトの仕事だ。 「恋愛…生命…復讐…物欲の生物…恋愛…物欲の食べ物…復讐…」 ミクトはその種類を口に出しながら、印刷された紙を自在に操り、籠に素早く納めていく。 「金欲…仕事…恋愛…学問…学問…復讐…生命…性欲…恋愛…」 「ミクト!」 ミクトは背後から名前を呼ばれ、仕分けの手を止めて振り返った。仕分け係の責任者のダーキが手招きをしていたので、ミクトは駆け寄った。 「ダーキさん、どうしたんですか?」 「お前に朗報だ!地球の現地に行く派遣隊に臨時で任命された。」 派遣隊とは、願い事を直接叶える仕事を担っており、花形の職務だ。ミクトは驚きとともに喜びに包まれた。 「よろしいんですか!?僕みたいな新米が。」 「お前も研修でやったと思うが、今は神不足の時代だ。対して何でもかんでも神にすがる者たちは増え続けてる。若い者にも早く実践の場に出てもらう必要があるのだ。お前の真面目な仕事ぶりが上から高く評価されたんだ、誇らしく思って行きなさい。」 ダーキはミクトの頭を撫でながら微笑んだ。 「ありがとうございます。早く一人前になれるように頑張ってきます。」 「うむ。」 ダーキはミクトに仕分けられた籠をひとつ渡した。ミクトは籠を背負うと急いで職場である「東の塔」を出た。東西南北の塔に囲まれた中央広場のど真ん中にある「みなかの塔」。それは派遣隊など特別任務の神様のみ立ち入りを許されており、様々な星と行き来することができる場所である。 当然初めて入るミクトは、不安と期待を胸に塔の門を開いた。
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