神様はタダじゃ動かない!

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8時間前、地球22時。 「…はぁ。」 橘奏多(たちばなかなた)は、自室で一枚の写真を見つめながら深い溜め息を吐いた。それは、彼女の小林美歌(こばやしみか)とのツーショット写真。明日の美歌の誕生日にプロポーズをすると前々から決めていたが、いざ決行日が近付くと奏多は緊張し始め、言葉が一切思い浮かばないでいた。 付き合って3年。同い年の二人は、今年で30歳を迎える歳であり、奏多は節目だと考えプロポーズを決意したのだ。 店員に二時間付き合って貰って選んだ婚約指輪。プロポーズする場所の選定、着ていく服、全ての準備は整っているが奏多は落ち着かなかった。 それは、美歌の気持ちが全く分からなかったからだ。 「…もし、断られたらどうしよう。」 奏多は写真を置き、指輪の入った箱を握りしめながら呟いた。 人間は誰もが安心を求める。以前より美歌から結婚についての話題が出てたり、プロポーズを待ってる感があれば、奏多はこんなにも悩まずにいられたのだろう。しかし、指輪まで用意した今、奏多には後戻りする選択肢は無かった。 「…後は神のみぞ知る…か。」 奏多は一階の和室に移動すると、普段見向きもしない神棚を見つめ、家族が近くにいないことを確認すると、ゆっくり手を合わせて頭を下げた。 「神様、どうか上手くいきますように、よろしくお願いします。」 奏多は少し気持ちがスッキリした気がして、そのまま部屋に戻ってベッドに潜り込んだ。 活動再開を告げる朝日がカーテンから射し込み、奏多を起こすように顔を輝かせた。 「…うーん…知らぬ間に寝てたな。」 奏多は目を擦り、ふと壁に掛けている時計を見た。 「6時か。まだ早いけど…。」 奏多は二度寝する前にトイレに行くために上半身を起こした。 「…え!?」 ベッドの足元側に小学生中学年くらいの男の子が立ってこちらを見ていた。奏多はこれはまだ目覚めてないのだと言い聞かせるように頬をツネってみたが、痛み感じるだけで視界が変化することはなかった。 「どうも。地球人の…えっと…橘奏多さん。」 奏多は一瞬恐怖を感じたが、その雰囲気から悪霊的なものではないような気がした。 「僕はミクト。あなたの願いを叶えにきた神様です。」 「…神…様?」 奏多は一瞬で目が覚めた。
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