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ミクトは、手に持っていた書類を確認しながら話を続けた。
「えっと、あなたの願いは彼女の小林美歌さんへの結婚プロポーズを成功させたい…合ってますか?」
「…え?願い…神…え?」
奏多が混乱した表情を浮かべると、ミクトはくすりと笑った。
「聞いていたとおり、地球人の皆さんは神様の存在を信じないタイプなんですね。ご安心ください、あなたはラッキーな方ですよ。神の力を借りて願いを叶えることができるんですから!」
奏多は何が何だかわからなかったが、確かに神にもすがりたい思いだったのは間違いなかったため、目の前にいる神と名乗る少年ミクトの言葉をとりあえず信じてみることにした。
「あ、ありがとうございま…」
「じゃ、これ契約書です!」
ミクトは奏多が話し終わる前に、どこから取り出したのかわからない分厚い書類を一式手渡した。勢いで受け取った奏多だったが、書類の多さに戸惑いを隠せなかった。
「ちょ、これは?」
「あなたが受け入れてくれたんで、契約に進みます。内容を確認して一番最後の紙にサインをお願いします。」
「契約?」
「何か疑問でも?契約結んでおかないと逃げられちゃうと困りますし、後々問題になっても嫌なんで。」
淡々と話すミクト。
「逃げられるって…あれですか、お金かかるんすか?」
奏多は真剣な顔で質問したが、それを聞いたミクトは吹き出すように笑った。
「プッ、ハハハハハハ!神様にお金なんかいらないですよ!それは地球独特の文化です。」
「…なら、逃げられるってどういう意味?」
奏多の再度の質問に、ミクトは急に表情を変え、奏多の目をじっと見つめた。奏多はその視線にとてつもない恐怖を感じ身体中に悪寒が走った。
「…あ、あのぅ…」
「命ですよ、命。」
ミクトは視線を逸らすことなくじっと見つめながら答えた。奏多は予想だにしない答えに更に恐怖を募らせた。
「い、命!?」
「そうです。神様は金もいらなければ、食べるものもいらない。その替わり皆さんから命のエネルギーを貰って生きてるんです。神様があなたたちの願いを叶えることは、神様にとって一種の生業なんですよ。」
「ちょ、ちょっと待ってくれ!なら俺は死ぬのか!?」
「ハハハハ、それじゃ願い叶える意味ないじゃないですか。命全てはいただかないですよ。まぁ、全て貰うレベルの願い事もたまにはありますけどね。研修の時に聞いた事例では…」
ミクトは楽しそうに話を始めたが、奏多は非現実的なことばかりで、未だ夢を見ているような感覚を拭えず、ミクトの話など全く耳に入ってきていなかった。
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