そして神はほくそ笑む

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 かくして男は目覚めた。  その名は無く、肉体も無く、ただ“ひと”を模して与えられた機械に詰め込まれ、それでも少女らと女が目の前にいた。  見慣れない景色というだけではない、なにもかもが高い鮮度で目に映る。これまで見てきた学校の中が作り物であるという実感を、今になってようやく感じていた。 「そういえば、焼きそばパン結局ひと口しか食ってないんだよな」  ぎこちない動きで起き上がった男の第一声にその場にいた全員が半笑いになる。 「わりぃがニイさん、この世界に焼きそばパンはねぇよ」 「マジか」  金麦の言葉に愕然となる俺を見て地味眼鏡が続ける。 「焼きそばパンどころか学校もないし“ひとの形をしている者”すらここにいるだけで全員だよ」 「マジか」  あちらでは保険医姿だった、なぜか今は赤い薄絹を纏ったほぼ全裸の女が続ける。 「そしてなんと男は汝しかおらぬぞ。嬉しかろう?」 「いやいや嬉しくねえよ。なんでこんなことになってんだ」 「話せば(なご)うなるが、まあ暇はいくらでもあるでな。のちのち順を追って教えてやろう。ついでに焼きそばパンを手に入れる方法ものう」  焼きそばパンを得る方法はまだ残されているらしい。たったあれだけのことがどんだけ難易度が高いのか俺には測りかねるが。 「ともあれ、だ」  地味眼鏡が横目に口にする。俺を見下すように、不敵に、冷笑的に。 「キミがまた焼きそばパンを売ってくれるような世界を作るのさ、今からね」  なるほど、俺の仕事は既に決まっているらしい。 END
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