103人が本棚に入れています
本棚に追加
『Over night』
「ねぇ、沖さん。次の週末、ここに泊めてもらってもいい?」
沖 克彦の家に遊びに来ていた有坂 樹莉が、帰り際に突然そんなことを言い出した。
「……俺は構わない、けど。おうちの人は? 外泊なんかして大丈夫なのか?」
(嬉しいよりもそちらの心配が先に立つのは、やっぱり俺はまだ樹莉に対して教師の意識が強いんだろうか)
有坂はともかく、それは沖にとってはどうしても気になってしまう現実だった。出発点が『教師と生徒』なのだから、今は違うとはいえ完全に切り離して考えることはまだできないでいるのだ。
(いやでも相手は十八歳なんだから、教師とか生徒とか関係無くむしろこれが普通だよな? だっていい大人がずっと年下の、しかも未成年に対して自分の欲望最優先じゃあんまりだろ……)
沖の内心の葛藤など当然知らぬままに、有坂があっさり答える。
「大学入ってからできた友達には、一人暮らししてる奴らもいるからね。で、その中には親の目がなくなって気楽に遊んでる連中ももちろんいるんだけどさぁ。でも俺も意外だったんだけど『寂しいから泊まりに来て欲しい』って奴も結構いるんだよな。まぁ、まだ一人暮らしにもこっちにも慣れてないせいもあるとは思うんだけど」
有坂は外泊の言い訳などは前もってちゃんと用意していたらしい。
最初のコメントを投稿しよう!