パンデミック

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パンデミック

俺の名前はニシ・ タカユキ。 対バイオテロ組織、 A・B・E・Sに所属するヘリパイロットだ。 チームのメンバーからは、 レッドヘッドと呼ばれてる。 俺のフライトヘルメットが、 赤い塗装を施してあるのでそう呼ばれている。 俺のチームは組織の中でも屈指の実力を誇る。 まずは隊長、 我が曲者揃いのチームを纏めあげる歴戦の猛者。 アレックス少佐だ。 彼は元々、 アメリカの特殊部隊に所属していたらしい。 そして3度もバイオテロから生還しているのだ。 彼は戦闘スキルも、 指揮能力も申し分ないし、 何より部下を大事にしていた。 そんな彼だからこそ皆ついて行くのだろう。 リベル中尉、 彼は冷静沈着でクールな男だ。 いつもメガネの位置を気になるのか、 何度もクイッとしたりしている。 だからメガネとか呼ばれたりする。 そしてブッチャー軍曹、 彼は爆発物のエキスパートだ。 彼は爆発をとにかく愛していた。 ボンバーマンと呼ばれたりする。 キムラ・ユリ伍長、 彼女は俺が前いた部隊の同期だ。 彼女はとても優秀なスナイパーだ。 どんな状況でも外さない。 まさに現代に生きるシモ・ヘイヘと言うべきか。 これが我らアルファチームのメンバーだ。 みんな癖は強いが実力は確かだ。 そして俺は彼らを現地へ無事運び、 また無事に回収するヘリパイロット。 たまに現地で一緒に戦ったりもする。 彼はよく連携も取れていて、 最高のチームだ。 俺は彼らと共に戦えて本当に光栄だと思う。 彼らと宿舎で他愛ない話で盛り上がってたある日。 ブッチャー「おい、 タカユキ! お前このアニメ知ってるか!? 」 と、 ブッチャーが1枚のDVDを差し出す。 これなら俺もよく見てた奴だ。 俺「あぁ、 昔よく見てたよ。 それめたんこおもろいよな! 」 ブッチャー「グレート! なぁなぁ! ヒロインの声優って誰がやってんだ? 」 俺「あー、 えーと確か、 そうだ! 高橋 雪乃って人だったはず。 」 ブッチャー「そうか! 俺ファンになっちまったよ! 」 俺「分かるよ凄く可愛いし、 声も良いんだよな。 俺も好きだな。 」 ブッチャー「流石タカユキだぜ! 」 ブッチャーは日本のアニメがすごく好きなのだ。 そして気に入ったキャラがいると、 よく声優の事とかを聞いてきた。 ブッチャーとアニメの話をしていると、 突如、 館内放送「緊急指令、 緊急指令! 至急戦闘準備! 至急戦闘準備! 各隊長はブリーフィングルームまで! これは訓練ではない! 繰り返すこれは訓練では無い! 」 けたたましいアラート音と共に、 館内放送が鳴り響いた。 ブッチャー「ジーザス! 出動か! タカユキ、 この話はまた後でだ! 」 ブッチャーはそう言うとコーヒーをグイッと飲み干す。 そして、 そそくさと部屋を出ていく。 俺も飲みかけのココアを一気に流し込む。 そして俺は直ぐに着替えを済ますと、 ヘリコプターの元へと急いだ。 急ぎヘリコプターの状態を確認する。 俺「よし、 チェック良し! 完璧だな。 ミルク、 今日も頼むぞ! 皆でまたここに戻ってこよう! 」 ミルクとは俺の操縦するヘリコプターの名前である。 特に意味は無い。 俺は自分の装備1式を積み込み、 もう一度チェックを行った。 何度見ても異常はない。 燃料も満タンだ。 俺はブリーフィングに参加するため、 隊の宿舎に戻ることにした。 アレックス「よし! 全員揃ったな! 」 リベル「隊長、 またテロですか? 」 アレックス「あぁ残念ながらな。 」 ブッチャー「クソどもめ! 」 アレックス「今回もバイオテロだ。 アメリカ南西部の海上都市、 コバルトシティ。 街は既に壊滅状態に近い。 街へ唯一行ける橋は既に軍が封鎖した。 我々の任務はこの街へ降下し、 市民の救出である。 この任には我々アルファ、 そしてブラボー、 チャーリーがつく。 全員生きて帰るぞ! 」 隊員「イエッサー! 」 アレックス「タカユキ、 今回も頼んだぞ! ミルクはどうだ? 」 俺「今日も絶好調です! 先程確認してきましたが、 何時でもどこでも行けます! 」 アレックス「流石だ! いいか、 俺たちはこの地点から降下する。 頼んだぞ! 10分後に出動だ! 」 俺「了解! 」 そして10分後。 隊員全員ヘリに乗り込んだ。 俺「それでは離陸します! 」 俺は何か言い知れぬ不安をずっと感じていた。 それが何かははっきり分からない。 ただ単にこれから地獄へと向かうのだから、 その恐怖心がそう思わせてるだけかもしれない。 操縦桿を握って早1時間、 遂に目的地が視界に捉えられた。 黒煙がそこかしこから上がってる。 何度見ても慣れない光景だ。 俺は降下地点に指定されていたビルを探す。 あった、 そこは問題なく降下できそうだ。 俺は早速、 ミルクをビルに近づける。 と、 その時だった。 突如制御がきかなくなったのだ。 けたたましい警告音が鳴り響く。 アレックス「タカユキ何があった! 」 俺「メーデーメーデー! くそっ! エンジントラブルです! このままでは落ちます! 」 このままでは墜落するのは目に見えていた。 目標はもう目の前だ。 俺「隊長、 このままでは墜落します! ギリギリまで寄せます! そのまま降下してください! タイミングは俺が! 」 アレックス「分かった! お前ら降下準備! 」 ブッチャー「レッドヘッド、 頼んだぞ! 」 俺は、 何とかミルクの挙動を制御する。 次の回転で行けるはず! 俺「今です! 飛んで! 」 俺は警告音に負けぬよう叫ぶ。 アレックス「GO! 」 ブッチャー「チクショウめ! 」 リベル「タカユキ! グッドラック! 」 ユリ「生きてね! 」 視界の端で皆が無事に降り立つのを確認する。 どうやら皆は無事に降下出来たようだ。 俺「ミルク! ありがとう! あとは着陸するだけだ! 頑張れよ! 」 俺の檄は届いてないのか、 高度がみるみるおちていく。 そして遂にミルクは地面に叩きつけられる。 俺「がっ! 」 とてつもない衝撃が体を駆け巡る。 耳鳴りと目眩がする。 俺は死んだのか? いやこの不快な感覚は生きてる証拠だ。 俺は暫く動けなかった。 無線「ザザッ、 ザザッ! ザザッユキ! タカザザッ! タカユキ! 応答ザザッ! 応答しろ! ザザッ。 」 無線が俺を呼んでいた。 俺は震える手で無線機を取る。 俺「はい………。 」 無線「ザザッ無事か! タカユキ! ザザッ、 動けそうか!? ザザッ! 」 どうやら隊長のようだ。 俺「なん、 とか…………、 無線機の調子は最悪みたいですけどね…………。 」 無線「心配させやがって! ザザッ! いいか、ザザッ、 ポイントアップルまで頑張ってザザッザザッ! いいな!ザザッ! 」 無線が切れてしまった。 よく聞き取れなかったが、 ポイントアップルまで行けばよいのだろう。 ポイントアップル、 ここから北に少し行った所にあるビルだな。 だいぶ意識がはっきりして来た。 俺は自分の装備をカバンから取り出す。 俺の愛銃、 P90、 そしてデザートイーグルだ。 この子たちと俺は何度も死線を乗り越えてきた。 今回だって乗り越えてみせる。 そしてミルクに別れを告げる。 俺「今までありがとう、 ごめんな。 」 俺がふとミルクを見上げると何か違和感を感じた。 もはや大破していて確証はないが、 いつものミルクとは少し違う。 そんな気がした。 もしや、 いやまさか。 そんなことが? 一体誰がなぜ? ミルクには、 何者かが細工したような後があった気がするのだ。 だが今はそれどころでは無い。 墜落の音で奴らが寄ってきてるはず。 俺はとにかくポイントアップルに向かうことにした。 ポイントに向かう道中、 生存者に会うことは無かった。 奴らには何度か遭遇したが、 1人でも何とかできた。 暫く道を進んでいくと、 目的のビルの前に着いた。 入り口にスプレーで丸が描かれてた。 これは我がチームの暗号だ。 どうやら隊長達は先に着いて居るらしい。 中の探索に言ってるらしい。 自分も後を追うように中に入ることにした。 中には沢山の死体があった。 奴らに襲われて死んだ人、 それと隊長達に倒されたであろう奴らの死体。 中には変異種の死体もあった。 にしても変異種の数が多い。 俺「誰だ! 」 俺はふと人の気配を感じ振り返る。 フラッシュライトが照らす先には、 返り血を浴びた女性が、 2人抱き合うようにへばり込んでいた。 俺「なんだ生存者か。 君たち大丈夫かい? 怪我は? 」 俺が優しくそう問いかける。 だが余程怖い思いをしたのか、 彼女達は震えてる。 俺「大丈夫、 心配しなくていい。 君達を助けに来たんだ。 」 俺がガスマスクを外し、 彼女達にほほ笑みかける。 すると2人は安心したのか、 少しずつ落ち着きを取り戻してきた。 彼女達はここのビルで働くOLらしい。 テロ直後2人はトイレに居たらしく、 ずっと閉じこもっていた。 そして銃声を聞き、 助けが来たのかと思いトイレを出たという。 その時奴らに襲われたらしい。 だが直ぐに誰かが助けてくれたようなのだが。 女1「私たちが襲われると、 誰かがそいつを撃って助けてくれたみたいなんですが、 私たちあまりにも怖くて気絶しちゃって。 気づいたらこんなことに。 」 どうやら彼女達が目を覚ました頃には、 助けてくれた人はいなくなっていたらしい。 俺「そうか。 とにかく無事でよかった。 感染もしてないようだ。 俺と一緒に行こう。 このビルで仲間達と合流することになってる。 」 俺がそう言うと彼女達は無言で頷く。 そして俺達が行こうとすると、 ブッチャー「レッドヘッド! タカユキ! お前! 」 聞きなれた声だ。 アレックス「タカユキ! 良くここまで無事に来てくれた! 」 ユリ「良かった、 本当に心配したのよ! 」 リベル「そちらの方は? 」 俺「生存者です。 感染はしてないようです。 」 アレックス「そうか、 良くやった! 」 俺「隊長、 1つご報告が。 」 俺は隊長だけを呼んだ。 アレックス「どうした、 深刻な顔をして。 」 俺「実はですね。 ミルクに何者かが細工したような痕跡があったんです。 誰かに嵌められたのかも知れません。 」 隊長は合点がいったような顔をした。 アレックス「そうか、 やはりか。 実はなチャーリーが全滅した。 ここに来る途中でな、 チャーリーの墜落したヘリを見つけたんだ。 」 俺「チャーリーのヘリが墜落!? そんなことが。 それで隊員は! 」 アレックス「ほぼ全滅だ。 1人だけ息をしていてな、 彼が言っていたんだ。 俺たちは嵌められた、 ブラボーに気をつけろ、 と。 それを伝え彼は死んでしまったよ。 」 俺「ブラボーに気をつけろ、 だって? 一体何が起きてるんですか!? 」 アレックス「俺にもわからん。 だがこのテロは不自然だ。 軍や組織の対応がいつもより早すぎる。 そしてここに来る途中、 銃で撃たれた民間人の死体もあった。 」 隊長に言われ思い出した。 確かに撃たれて死んだような死体が、 ちらほらあった。 それに奴らの数も思いのほか少ない。 既に撃たれて死んでるやつも少なからずいたのだ。 この街は銃の所持が禁止されてる。 警察とは考えられない。 明らかに軍とかで使われる銃によるものだ。 何かきな臭い。 俺「何か嫌な予感がします! 撤退要請をかけましょ! 」 アレックス「もうやっている。 だが本部と連絡がつかん。 我々は孤立してしまったんだ。 だがこのままではみんな共倒れだ。 これから我々はヘリポートを目指す! 」 確かに、 このまま本部の指示を待っていては死あるのみ。 こちらから動かなければ。 俺「了解! 」 アレックス「よし! お前ら! これより我々はポイントエコーまで撤退! この街を離脱する! 」 俺たちは2人の民間人を連れ、 ビルを離れた。 何とか俺たちはヘリポート付近まで来ることが出来た。 そして隊長が右手をあげる。 止まれのサインだ。 みんなその場で静止し、 腰を落とす。 アレックス「ブービートラップだ、 恐らくブラボーの連中だろう。 奴らも自分たちの脱出用に確保してるんだろう。 恐らく殺し合いになる。 ユリ、 あの建物に入り狙撃の準備を。 リベルは左から回ってくれ! ブッチャーこいつを解除できるか。 」 ブッチャー「あたぼうよ! ちょちょいのちょいだ! 」 アレックス「流石だ、 よしブッチャー右に回れ。 タカユキは俺とこい! 御二方はブッチャーの後に続いて、 彼の指示に従って。 」 みんな隊長の指示で動き出す。 俺と隊長は姿勢を低くしながら進む。 少し進むとヘリパッドの前に数人の人が見えた。 ブラボーの連中だ。 俺と隊長が物陰に身を潜め様子を伺う。 すると、 女1「助けて! お願い! 」 ブッチャーと一緒に居たはずの民間人2人が、 ブラボーの連中達に駆け寄っていった。 ブッチャーはどうした! 何があったんだ。 2人の慌てようからただ事では無いのは分かった。 ブラボーの連中は2人を視認するとあろうことか、 銃を向ける。 女1「う、 そ! やめて私たち感染してないわ! 」 女2「そうよ! やめて! お願い! たすけて! 」 2人は懇願した。 2人の懇願虚しく、 ブラボーの隊員は容赦なく2人の頭を撃ち抜いた。 俺「嘘、 だろ。 民間人だぞ! 」 アレックス「あぁこれで確定した。 タカユキ! ブッチャーを見てきてくれ! 」 俺がブッチャーの様子を見に行こうとした時、 ブッチャーがいた方から沢山の奴らと、 変異種がなだれ込んで来た。 ブラボーはやたらめったらに銃をぶっぱなす。 俺「まさかブッチャー、 あいつらに。 」 俺はふと奴らの群れにブッチャーらしき姿を見た。 アレックス「ブッチャー、 良い奴だったよ。 タカユキ俺たちの手で楽にしてやろう。 」 俺たちはブラボーと奴らを片っ端から撃ちまくった。 ブラボーも奴らも倒れるまで。 銃身が焼け付くんじゃないか、 そんな事も気にならないほど撃ちまくった。 そして持ち込んだ弾をほとんど使い果たして、 遂にブラボーと奴らは地面に伏した。 アレックス「ブッチャー、 安からに眠れ。 」 隊長はブッチャーのドックタグを引きちぎり、 十字架を切る。 俺はブラボーの隊員の死体を調べていた。 そしてあるものを見つけた。 それは作戦指令書だ。 俺らのとは違う、 最高機密と書かれていた。 俺はそれに目を通す。 内容はこうだ。 最高機密作戦指令書。 ウイルス研究所の証拠隠滅。 生物兵器の戦闘データ収集。 民間人、 並びにアルファ、 チャーリーの抹殺。 迅速かつ、 確実に誰一人生かすな。 貴君らの働きに期待する。 作戦開始から5時間後、 滅菌作戦を開始する。 それまでに脱出されたし。 となっていた。 作戦開始から5時間後? 俺はふと腕時計を確認する。 4時間50分、 既に作戦開始から4時間50分も経っている! 俺「隊長! 直ぐにみんなを集めてください! 脱出します! 急いで! 」 アレックス「なに!? 何があった! 」 俺「後で説明します! とにかく急いで! 俺はヘリを起動します! 」 俺はそう言いながら動きそうなヘリに乗り込む。 よしこれなら行けそうだ! 早速エンジンに火をくべる。 アレックス「タカユキ、 全員乗ったぞ! どうしたのだ! 」 俺「全員乗りましたね!? 離陸しますつかまって! 」 俺は荒々しくヘリを上昇させる。 とにかく街から離れなければ! 街から少し離れた時、 俺達のヘリをミサイルのような物が横切る。 まずい、 このままでは! 頼む間に合ってくれ! 突如、 激しい揺れと轟音が俺達をおそう。 警告音がヘリ内に響く。 俺「制御が! 頼む持ってくれ! 」 その日、 1個の都市が核ミサイルによって消滅した。 バイオテロの被害により、 地図が大きく塗り替えられたのだ。 人々の為、 身を呈して戦った彼らのことを知るものはいるのだろうか。 そして彼らはどうなったのであろうか。 彼らのその後を知るものは居ない。 ………………
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