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 夏休みも終わった9月の連休明け。電車でわたしと同じ制服を着ている人を発見した。衝撃が走った。いつかテレビで観た女性ピアニストの麗しい姿にも負けない。グレンチェックのパンツスーツにつややかな長い髪の彼女にわたしの目は釘付けになった。  憧れの視線を送っていたら、気が付いて笑いかけてくれた。電車を降りて学校への道すがら、話すことができた。梨田絵美さんという名前で4月生まれの高2。同じ通信制高校の先輩だ。 「これだけ魅力ある人なのに絵美さんのことなぜ気が付かなかったのかしら?」 「それは簡単よ、今まで月一しか通わなかったから。ほぼ家で家庭教師に教えてもらって課題を片付けていたのよね」 「そうすると、今日がその月一の登校日ですか?」 「いいえ違うわ。週3登校に変えたのよ」 「そうですか。嬉しいな。わたしは今のところ毎日通っています。バイトして学校へ行く生活をしています」 「偉いわね」 「親は通信に行くのは反対だったので、お小遣いをもらいにくくて。でもバイトも楽しいですよ」 「わたしは転校したの。前の高校にしがみつかず通信制に移って本当によかったわ」 「親は今でも一般受験しなかったことをブツブツ言いますが、わたしはぜんぜん後悔ないです」  うちの学校は私服でかまわない。制服が数種類あるなかで同じものを選ぶあたり、彼女への親近感は半端なかった。  神様はさっそく願いを叶えてくれた。感謝でいっぱい。絵美さんの妹分。何て素敵な響きだろう。
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