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ベッドに入り天窓の向こうの夜空に呟く。
絵美さんが昂と仲良くなりますように。昂とは、たぶんピアノを弾く仲間のなかで一番仲の良い人。彼も私も幼い頃から通っているので、いつ出会ったとか全く覚えがない。それぐらい前から知っている。6歳も年上なのに「昂」なんて呼び方をしているが何の違和感もないのは、彼を知る人は年齢に関係なくそう呼ぶからだ。家族でアメリカに住んでいたから、と彼は誰かに説明していた。今は大学のほうが忙しいらしくしばらく顔を見ていない。
星がきれいに見えるから、きっとわたしの願いは叶うに違いない。わたしはふたりが大好きだから、ふたりが仲良しになってくれたらどんなに嬉しいだろう。3人でリストやショパンの話をたくさんしたい。もちろんバッハにベートーヴェンも。
それから2週間くらい過ぎたところで、昂から「ようやくピアノに復帰できる」とラインがきた。昂に会える、またピアノが聴ける。どうしたら感じよくふたりが出会って仲良くなってくれるものか、考えに考えてぐるぐるぐるぐるしていた。ときどき、昂が物思いにふけりすぎているとき、また絵美さんが平静の奥に苛立ちを隠しているようなタイミングが悪いときを避けたい。
レッスン日がずれていてもサロンコンサートに顔を合わせるだろう。昂からは出席すると、絵美さんからは一緒に行こうねと言われている。半月ほど先の日曜日だから昂の帰国が予定通りなら行けるわけだ。
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