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『さぁ〜第一回・【ポロリもあるよ⭐︎ 女装レース!】も終盤となってきました! 段々見たくないポロリの方が蓄積し始め、みんなのストレスも最高潮となっているのではないでしょうか! 発案者の鈴木律はどう思っているのか! この地獄を作り出した本人も参加しています! さぁ皆さん一緒に、引き摺り下ろせっ⭐︎』
「うるせーーーーーーーッ!! ポロリってかモロリな方が悪いんだろうが!!!!」
『ポロリするところないからこうなってるんですよっ⭐︎ ぶっ殺しますよ⭐︎』
「ごめんって!!!!!!!」
アンカーとして引かれた白線の内側に立つと、ヒールや高下駄でプルプルしている生徒の中俺と放送部部長の喧嘩が始まった。いつものことである。
観客席の生徒どもも、恒例である放送vs俺にキャッキャとはしゃいでいる。放送の引き摺り下ろせに合わせて野次を飛ばすもの、俺の言葉にさすが会長〜そうだそうだ〜などと同調するもの、さまざまだ。
『だいたい徹夜かなんか知らないんですけどよくもまぁこの企画書通りましたね! 普通しませんよ女装レースとか! 本人ドンキの美少女戦士だし!』
「美少女戦士については衣装班の責任なんで〜! あとこれ通ったのは俺も意味がわからん! 何でだろうな!」
『あんたが三年間しっかりやってた信頼の証拠ですよ自惚れろボケェ!』
「騎馬戦の時も思ったけどお前俺のこと好きだな〜っ!」
『ハァ〜? 勘違いしないでもらえます〜三年であんたのこと嫌いな人間とかいませんがぁ!?』
「俺も大好きだよ愚民どもっ! ついてきてくれてあんがとな!」
後ろに迫ってくる深山をチラ見して笑う。いやそして走ってくる深山めちゃくちゃ怖いな! なんか凄い冬のヒグマとかその辺りといい勝負しそうだ! 相変わらず人間食べそう!!
放送部部長と俺の『夫婦漫才』と巷で呼ばれているらしい茶番にそうだそうだ〜だとか俺らも好きだぞ会長〜だとかさっさと自惚れろボケカス〜だとか罵倒なんだか愛情表現なんだかわからん野次が飛ばされる。
そうそう、いつもはこんな感じなんだよな。むしろ騎馬戦の時の方が異常だったってだけで。まぁなんだかんだ俺贔屓だもんな、部長。
だって俺、元放送部員だし。
『さぁ〜会長が走り出しました! 逃げる鈴木、追う深山! 別に深山に悪意はありませんが捕まったら食われそうで怖いですね! 味方なのに!』
分かる怖いよな、味方なのに。いつものことなので順調に深山からバトンを受け取り、走り出す。
同時に風馬も走り出した。流石というか何というか早い。なんだかんだ差をつけていた三年庶民クラスとの差を一気に縮め二位に躍り出る。
ので。
「カワイイパンツ見えてるぜ、冬馬」
「──へ? きゃああっ!」
冬馬が真っ赤になり、慌ててスカートを押さえ、座り込む。ひらりと見えたパンツは──白のレース。
盛り上がる会場、ボルテージマックスの放送! 我ながらめちゃくちゃに最悪である!!
『最悪だーーーッ!! 鈴木会長、相変わらず最悪の戦法です!! でもこちらとしては最高ですありがとうありがとう鈴野冬馬くん!! しかし鈴木律は止まらない! お前もパンツ見えてるぞ! 何だその黒のレース! お前そんなパンツだったのか!』
「着替えにあった!!」
『だから今日のパンチラ大体全部地獄だったんですか! ちょっと衣装班、衣装班ーッ!?』
衣装班の班長(三年)はてへっ⭐︎と可愛くてへぺろなんかしているが、189センチの大柄な男であるため一ミリも可愛くない。そしてこの美少女戦士を手配したのもこいつであるため今回の戦犯でもある。
何はともあれあと一周。皆フリフリでヒモのようなパンツに動揺し、真っ赤になってワタワタと走ってくる中独走する俺。ヒールの棒の部分へし折ってやるよと言わんばかりにざかざかと走る姿にすかさず実況がつく。
『おぉーっと! 鈴木会長、恥じらいを捨て走る走る! 早い! 早いです! ヒールとはなんだったのか!』
「ふははははは! 今更パンチラで恥じらってるやつに遅れを取るかよ! 三年を中盤に配置したのは痛手だったなぁ!?」
『なるほど、三年をラストに持ってくる構成はこういうことか! 汚い! 流石会長汚い! 二つの意味で汚いです!!』
「汚くてもな! 勝ちゃいーんだよ勝ちゃあ!!!」
ケケケケケ、とだいぶ久々にやる悪役笑いに会場は大ブーイング&大歓声。
そうそう。俺はお綺麗な手段で会長になったんじゃない、どういう手を使おうが勝って勝って勝ちまくって従わせたんだ。だって──
「鈴木ぃぃい! 汚物見えてんぞしまえ! 汚ねぇぞ二重の意味で!」
「人生ど根性! みたいな精神いい加減やめろ鈴木ぃぃい!」
「うぉぉぉおお! 基本的に悪役すぎる!! 会長かっけー!!」
「何でお前基本雑魚なのに毎回勝つわけー!? サイコーだぜ会長〜!!」
ヒールのまま走り、ゴールテープを切る。
クラス学年関係なく全員楽しそうに歓声と野次を送って会場が盛り上がる。あぁお前ら、楽しそうだな!
そうだろう、だって──
「うるせーーぞ! お前らが惚れた会長は、こういう俺だろうが!」
会場のボルテージがさらに上がる。
暑苦しい大歓声が、負けた奴らも勝った奴らも飲みこんで、割れんばかりの喝采に変わった。
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