人生は恋愛バラエティみたいにはいかない

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キリオ君は何か黙って考え込んでいるみとさんを眺めた。 いつもの通り眼鏡はぺちゃんこの鼻にずり落ちているし、猫っ毛の髪はあちこち寝癖でハネている。来ている服はおばあちゃんが喜びそうな厚手の毛糸のカーディガンで、胸元に毛糸で編んだポンポンがくっついている。 大学生にもなってポンポンの付いたカーディガンって。 キリオ君は半ば呆れたような気持ちでそれを見ていたけれど、みとさんがクシャンとくしゃみをしたのでエアコンの設定温度を少し上げて温かいココアを入れてやった。ちょっと考えてから、買い置きしてあった小ぶりのマシュマロを3つ乗っけて、みとさんにカップを渡す。 みとさんは「ありがとぉー」と殊更大げさに言って、ベッドの上で膝を抱えて、本当にありがたそうにそのココアのカップを両手で持ってゆっくりとすすった。まるでとびっきり大事に飼われている子犬、いや、子狸みたいだ。 みとさんの幸せそうな様子をしっかり見届けて、キリオ君は満足そうにまた台所の拭き掃除に戻る。
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