良縁

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そう口に出した瞬間、気づけば目の前が暗くなり、とても温かいものに包まれていた。 彼のたくましい腕に抱きしめられていたのだ。 「あの……、千田部長。離して……、もらえませんか?」 「それ、本当か? 夢じゃ……ないよな?」 「えっ?」 「お前が俺に恋してるって」 「えっと……、あの……」 「それって、俺のこと、好きってことでいいんだよな?」 そう聞かれた瞬間、自分が今何を口走ったのかを思い出し、途端に顔が熱くなった。 「それは……! その……」 「自惚れても、いいんだよな?」 「……はい」 「……いつからか、聞いてもいいか?」 「小学校の時……です。でもその時は自覚がなかったんです。ただ気になる人だなあってだけで。でも……」 「でも?」 「あなたと同じ会社で、部下として働いているうちに、あの時の人だって気づいて。そしたら、あなたに対する気持ちが、実はそうなんじゃないかって」 「そんなに前から俺のことを思ってくれていたのか?」 「はい……。千田部長は、いつから……私のことを?」 「俺も同じだ。小学校でお前を見て、一目で好きになった。会社で上司と部下として働くことになったときは、本当に嬉しかったし、絶対手に入れてやると思ってた」 そう言ってさらに力を入れて抱きしめてきた。
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