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次の日の仕事終わり。
いつもとは違う路線に乗って、目的地へと向かう。
気分は上々。昨日あんなに泣いてたのがウソみたい。ヒールを履かなくてもつり革に手が届くし、本当いい気分。
目的の駅で降りて、まっすぐ目当ての場所へと向かう。そこは商店街から少し離れた角地に建ってる。何度かきた場所。
そう、マサヤの勤めるケーキ屋さん。外からうかがうと、ちょうどマサヤが店番をしてる。お相手してるのは、あら、昨日のあのおチビさんじゃん。素敵素敵ナイスタイミング。
丸いヒップを揺らしてお店へと入る。
「いらっしゃいま…」
マサヤが途中まで言って、入ってきたのが私とわかると絶句した。
「今日のオススメはどれ? マサヤ」
目を真ん丸にして私を見てるマサヤに、胸とウエストを見せびらかすようにして髪をかき上げる。
「え、え…、サリナ、だよな…?」
「何? 一昨日まで一緒に寝てたのに、もう忘れたの?」
クスクス笑いながら言うと、マサヤは顔を真っ赤にして、
「そっ、それは…っ! あ、違う、違うんだよエリちゃん…!」
私と昨日のおチビちゃんを交互に見ながら顔を青くしたり赤くしたりと忙しいマサヤ。おチビちゃんは私をつま先から頭のてっぺんまで見ると、マサヤに視線を移して、冷ややかに言った。
「彼女さん? 綺麗な人だね。私、何か勘違いしてたみたい。じゃ」
そう言っておチビさんはサッと身をひるがえして店から出ていってしまった。
「あーあ、マサヤってば。ちゃんと私と別れてからにしないからー。バチが当たったね」
マサヤは相変わらず顔色を赤くしたまま、
「いや…! サリナ…! あの子は違うんだよ! っていうか、おまえ、どうやってそんなダイエットして…⁉」
と息も絶え絶えって雰囲気。あー、いい気分。
「違うも何もないし。私とも『距離』を置いてるんだしね。っていうか、もう地球の裏側まで距離置こう? ね、マサヤ」
「いや…! 待ってサリナ! ちょっと多分誤解が…!」
「じゃ、次会うときはブラジルで。さよなら」
「サリナ…!!」
マサヤの声を背中に店を出て、駅へと向かう商店街を歩く。すれ違う人みんながちらちらと私を目で追っているのがわかる。カップルの男の子が思いっきり振り返ってて、彼女に腕をつねられて「痛い!」と声をあげた。ふふ。ちょっと可哀想。でもちょっと優越感。
さーて。すっきりしたし、今度は浮気しない、甘い物食べさせ過ぎない彼氏見つけなきゃ。
置き土産のバニラ魔神さんには感謝だけどね。
【 Sweets! 】
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