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「マ、マサヤ、ちょっと待って! 今日はもうおなかいっぱいだよ。さっきごはんも食べたし、このケーキ食べたらすっごく満腹になっちゃうから!」
慌てて止めると、マサヤは眉毛を下げて
「そっか…。そうだよね。ごめんねサリナ。いつも試食してもらっちゃって。サリナ、的確な感想言ってくれるから、ついオレも力入っちゃって」
としょんぼりした声を出した。
「あ、ううん。私もマサヤの作るケーキ好きだし…? ひとつとかなら、ね? 別にいいんだけど…」
『それでも毎日はちょっと』って言いたいのを飲み込む。マサヤががんばってるんだから、私だって応援したいもん。それでも…毎日ケーキ2個はさすがに、ね…。
「ん。ありがとうサリナ。じゃあ、オレ、片付けるから先にお風呂入っておいでよ」
「うん。いつもありがとね」
そう言ってパジャマを持ってお風呂へと向かう。
洗面所でふと鏡に映った自分の体が目に入る。
う…。やっぱりまた太った…。ポコッとでっぱってるおなかを指でつまむ。ああ…こんなにしっかりつまめちゃう。会社帰りに一駅歩くだけじゃ、やっぱりダメか。早起きして、朝も一駅歩こうかな…。
しょぼんとしながら湯舟につかって、少しでも脂肪を落とそうとおなかや太ももをマッサージしながら、そっとため息をついた。
そう。マサヤが就職してからというもの、毎晩食事のあとに彼の作る試作ケーキを2個は食べてるから、もとは痩せてた私の体に、すこーしづつ、でも確実に、あまーいものを食べた証の脂肪がつき始めてる。気づいてからはできるだけ歩くようにしたり、階段を使ったりしてるけど、それでも追いつかないくらい、美味しいケーキの代償が私に降りかかってきているの。
マサヤの作るケーキは、確かに美味しい。でも、このまま太り続けたら本当ヤバい。それでも、自分の作ったケーキをショーケースに並べたいっていう彼の夢は応援したい。…寝る前に、腹筋もしようかな。
何度目かのため息と一緒に、水滴がぽつん、と湯舟に落ちた。
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