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減ったんだよ? 減ったの。1日1個に減ったの。でもね? ケーキって、カロリー高いじゃない? ね? だから特別な日のご褒美とかで食べるじゃない? ね? そうだよね? 毎日食べたら、さ、それは、ね? ふ、太っても仕方ないと思うんだ…! 思うんだよ…! なのに。
ある晩、いつもみたいに晩ごはんを食べ終えて、マサヤが淹れてくれた紅茶を飲みながらケーキを待っていると。
マサヤが自分のマグカップを持って私の正面に座った。
「? 今日は試作しないの?」
不思議に思って聞いてみたけど、彼は真剣な顔して首を横に振った。そして私の目を見て、言ったんだ。
「少し距離を置きたい」
「え?!」
な、なになになに?! きょ、距離を置く?! そ、それってつまり、わ、別れたいってことだよね?! え?! ええ?! えええ?!
「待って! 突然なんで…? 私、何かした?」
責めないように、ゆっくり聞いてみる。でも声が震えちゃう。
マサヤは首を横に振ると「最近、ずっと考えてたことだから」と言うだけ。
なだめたりすかしたり揺すぶりかけたり下手に出たり、あれこれしたけど全部無駄。マサヤは「決めたことだから」って言うばっかり。
目の前が真っ暗になった。私、マサヤの夢を応援してるのに。夢のために協力だって惜しまないのに。
「マサヤのために毎日ケーキ食べて12キロも太ったのに、ひどいよ…!!」
つい責める言葉が出てしまう。すると彼はイヤそうに眉をしかめて、
「やっぱり…」
と言った。
「やっぱりって何…?」
聞き返すと、彼はアメリカ人みたいに両手を広げて首を振りながら、
「12キロも太ったんだろ? 努力してるとかウソだったんじゃん。サリナが自分に甘いからそんなに太ったんだよ」
「違うもん! 本当に毎日運動してるんだよ?! それでも毎日ケーキ食べてたらさっ! 仕方ないじゃんっ!!」
「仕方なくないよ。現にオレは体形変わらないじゃん。サリナがオレとの付き合いに甘えて怠けてるから、そんなに太ったんだよ。オレ、デブとかマジ無理だから」
「それが本音?!」
無慈悲なマサヤの科白に涙が出る。マサヤはしまったって顔したけど、言ってしまったことは仕方ないと考えたんだろう。すぐに開き直って、
「ま、本音っていうか、距離置きたい理由だね。そしたら、オレ、明日にはここ出てくから」
「出てって、どこに暮らすの…? そんなにすぐ住む場所とか見つかんないよ?」
「サリナには関係ない。じゃ、オレ、キッチンで寝るから。おやすみ」
そう言って紅茶を飲み干すと、彼は寝袋を引きずってキッチンへと消えていった。
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