鬼島くん、参上

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あたしがプリントを見て、ため息をついてると、後ろからチョイチョイと背中をつつかれた。つつかれた方を振り返ると、すぐ後ろの席の女の子が不服そうに口を尖らせて、頬杖をついてる。 「ありえなくない?夏季集中はどの学年もあるからあきらめてたけど、こんなもんまでやらせるかね、ふ、つ、う!!先生たちアホじゃないの?」 今、悪態をついた後ろの席のこの子は、あたしの友だちの泉美(いずみ) 真衣(まい)ちゃん。 真衣ちゃんとは中学の時に通ってた塾が一緒で、その時は「あ、いつもの子いるな〜」ぐらいの認識だったんだけど、高2のクラス替えで初めて一緒のクラスになって「塾一緒だった子だ!!」って意気投合して、仲良くなったんだよ。 あたしが真衣ちゃんの言葉に苦笑いしてると、真衣ちゃんはまだ言い足りない様子でフンと鼻を鳴らした。 「それに、隣人愛だったらうちらじゃなくて、あそこで爆睡してる馬鹿に叩き込めっての!」 真衣ちゃん、そういいながら『爆睡してる馬鹿』の方を顎で思いっきりしゃくる。 素敵なプリント配布のおかげで騒然となっているうちのクラスで唯一爆睡している、その男。それを見て、うわぁ…って思わずあたしも苦笑い。先生もようやく生徒が一人、まっっったく自分の話を聴いていないことに気づいた。 「鬼島(おにじま) (りつ)っ!!!いい加減起きなさい!!!!」
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