322人が本棚に入れています
本棚に追加
「ちゃん付けなんて似合わないよ。おかしいから止めて、愁」
自然と彼の名前を呼べた。彼もそのことに気づいてくれたみたいで。微笑みながら、「よくできました」と褒めてくれた。
そのままそっと手を握られ、憧れていた恋人繋ぎをすることができた。
「…幸奈、今度、遊びに行かない?」
手を繋ぎながら歩いていると、彼の方から突然、誘ってくれた。嬉しかった。
でも緊張からか、どう返したらいいのか分からず、黙り込んでしまった。
「大学の夏休みは長いし、それに俺と幸奈は同じ大学だから、二人共夏休みの期間は同じだし、それにバイト先まで同じだ。それなら休みは調整しやすい。どうかな?」
彼も緊張しているのだろうか。私の答えが早く聞きたいと言っているように聞こえた。
答えなど、言わずとも最初から決まっていた。だって一つしかないのだから。
「愁と一緒に過ごせるのなら、一緒に過ごしたい。
だから、よろしくお願いします。愁とお出かけできるの楽しみ」
ただアルバイトをして過ごすだけで終わるかと思っていた夏休みに、一気に薔薇色が見え始めた。
より一層、愁のことしか考えられなくなってしまいそうだ。
「それじゃ、夏祭りに行かないか?この近所で小さなお祭りがあるらしんだけど、どう?」
夏祭り…か。去年は高校の友達と、最後の夏休みだからと、女二人で浴衣を着て行ったのを、ふと思い出した。
初めて男の子とお祭りに行く。しかも好きな人と…。
心臓がバクバクしている。行きたいに決まってる。ずっと憧れていた。好きな男の子と一緒に花火大会に行くことを…。
最初のコメントを投稿しよう!