1章:ずっと一緒だと思っていた…

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            ◇ 花火大会当日を迎えた…。 花火大会に行く直前に愁から、『浴衣を着てきてほしい』…とお願いされた。 正直、迷った。本当に用意してもいいのかどうか…。 いくら頼まれたからといって、彼女でもないのに、いきなり準備万端で意気込んで行って、重い女だと思われないか心配だ。 色々悩んだ末、私はやっぱり愁のお願いに応えたいと思った。だって、愁に可愛いと思ってほしいから。 浴衣を着て、髪をアップにしただけなのに、いつもとは違う自分になれたような気がした。 鏡で自分をマジマジと見つめる。今日の私を彼に可愛いと思ってほしい。そう強く願った。 浴衣を着ているので、下駄を履いてみた。下駄だと上手く歩くことができない。 それなのにも関わらず、心は浮かれて落ち着かないまま、逸る気持ちを上手く制御できず、自然と歩くスピードも上がった。 せっかくの浴衣だったので、ゆっくり彼の元へと向かうはずだったのに…。 愁との待ち合わせ場所は、二人がそれぞれ住むアパートから近い公園だった。 公園に着くと、既に彼の方が先に来ていた。 「愁、お待たせ…」 いつもと違う私を見て、彼はどう思うのだろうか。 愁、私の変化に気づいて…という想いを込めて、彼の元へと近づく。 彼が近づく私に気づき、手を振ってくれた。 恐る恐る彼の表情を窺うと、顔を真っ赤にさせながら、驚いていた…。 「幸奈、すげー可愛い……」 口元に手を添え、顔を背けてそう言った。可愛いって言ってくれた。照れてくれたのが嬉しかった。 どうしよう、心臓のバクバクが加速していく…。 「ありがとう…。そう言ってもらえて嬉しい」 思わず、私まで恥ずかしさで照れてしまい、素直な気持ちが溢れてしまった。だって、彼の言葉が嬉しかったから。 たったそれだけのことなのに、距離がグッと縮まったような気がした。
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