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私ばかり食べてしまっていることを気にしていたら、愁はバツが悪そうな顔をしていた。
「俺はその…、幸奈がたくさん食べてる姿を見るのが好きなんだ。
それと俺は男のわりに少食だから、気にせず幸奈が食べてくれ」
愁はきっと気を遣ってくれたのであろう。あまりにも私が美味しそうに食べるから。
本当は一緒に食べたい。でも、彼が私の食べている姿が好きなのであれば、それでいいと思った。
「分かった。でも、愁も食べたくなったら、遠慮せずに言ってね?」
私は一旦、愁のことは気にせずに、好きなだけ食べた。
焼きそばもたこ焼きもあともう少しで食べ終わりそうなところで、お腹がいっぱいになり、もう食べられなくなってしまった。
「愁、ごめん。もうお腹いっぱいだから、愁も食べて…?」
そう告げた途端、愁はそっと手を伸ばし、私の口許に触れた。
「口許に付いてたよ」
口許に触れた指先をペロッと舐めた。そのまま残りの焼きそばとたこ焼きも食べ始めた。
私は自分の口許に付いたのを、舐められたことで頭がいっぱいになった。
「幸奈、ここだと花火が見にくいから、見やすい場所に移動しないか?」
場内アナウンスでも、もうすぐ花火が打ち上がることを放送している。
確かにここだとテントが邪魔し、花火と被って見えそうにないので、移動した方が良さそうだ。
それはさておき、気になることが一つある。お互いに初めて参加する花火大会のはずなのに、どうして愁は、花火を見る前から見やすい場所を知っているのだろうか。
やっぱり、以前に他の女性と来たことがあるのかもしれない。心の中で嫌だなと思った。
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