1章:ずっと一緒だと思っていた…

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「そろそろ帰ろっか」 愁がそう言うと、再び手を繋いで歩き始めた。 今思えば、素直に『好き』と伝えていたら、何かが大きく変わっていたのかもしれない。 でも、気持ちを伝えることなく帰宅した。帰り道、ずっと手を繋いでいた。そして家まで送ってくれた。 手を繋いでいるだけで、私の気持ちが愁に伝わっちゃえばいいのに…。 そしたら、愁は私に振り向いてくれるのかな? 愁にとって手を繋ぐということは、意味のない行為なのかもしれない。 それでも私にとっては、手を繋いでいるというだけで意味がある。 だからこそ、この手が離れてしまうのが怖い。 もうすぐ魔法が解けてしまう。タイムリミットが迫ってきている…。この時間が終わってしまうことが、どれだけ怖いことか。 だって、もしかしたら、明日から愁の傍に居られなくなってしまうかもしれないから。 「着いちゃったね…」 アパートに着いた途端、お互いの手が離れてしまった。まだ手を繋いでいたかった。だって、もっと愁と一緒に居たいから。 それはあまりにも大胆すぎるお願いで。恥ずかしくて言えないので、ここで解散することにした。 「送ってくれてありがとう」 いっそのこと、好きだって伝えてしまいたい。 言いたいことはたくさんあるはずなのに、いつも言えずにいる。 なんだか愁も、私が伝えるのを待っているかのように感じた。
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