1章:ずっと一緒だと思っていた…

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「…今日も送ってくれて、ありがとう」 気がついたら、あっという間にアパートに着いてしまった。「また明日、バイトで」…といつも通り解散をした。 愁に背を向け、歩き出そうとしたその瞬間、腕を掴まれた。 「…待ってくれ。今日はもう少し一緒に居たい。幸奈ん家にお邪魔してもいいか?」 掴まれた腕から、愁の熱が伝わってきた。全身が熱に侵され、冷静な判断ができない。 「い、いいよ。私ももう少し一緒に居たいから…」 何も考えずに、反射的に答えてしまった。いつもの私ならどうしていたのか、分からなくなってしまった。 ただ、一緒に居られるだけでよかったのに。いつしかそれだけじゃ物足りなくなっていた。 愁の気持ちが私に向けばいいのに。好きな人って誰?教えてよ、愁の好きな人…。 「いいのか?一応、俺、男だよ?」 そんなことは分かってる。だって私は、愁のことをとっくに男として意識しているのだから。 寧ろ愁に、私を女として意識してほしい。 「愁だから、いいんだよ……」 この言葉の本当の意味を早く分かってほしい。他の男の子なら、家に上げたりなんかしない。 愁だから。好きな人だから。家に上げる。だって、その先の展開を期待しているから。 今の関係を早く壊したい。でも、同時に壊れることが怖くもある。 そんな恋に臆病な私の心の殻を壊してほしい、愁に…。 「分かった。それじゃ、お邪魔します…」 玄関の扉の鍵を解除し、扉が開き、愁が私のお家の中へと入る。 それはまるで、見せたことがなかった心の淵さえも、見せてしまったかのような、そんな錯覚に陥った。
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