1章:ずっと一緒だと思っていた…

22/31
前へ
/346ページ
次へ
「綺麗にしてるんだな…」 部屋に入るなり、愁は私の部屋中を見渡す…。 見られているのかと思うと、物凄く恥ずかしい。 「あんまりジロジロ見ないで…。恥ずかしいから」 自分の家のはずなのに、居心地が悪い。 愁が居るだけで、心臓が高鳴って、落ち着いていられない。 「俺は幸奈の部屋に入れて嬉しいよ。ありがとう、お家に上げてくれて」 断る理由が特に思いつかなかった。だって私は、愁のことが好きだから。 こうして一緒に居られる時間が、どれだけ貴重なことか。 愁は気紛れかもしれない。それでも私は、愁と一緒に居たい。 「気にしないで。大したお構いはできないけれど、よかったらお茶でも飲んで」 冷蔵庫の中に入っている、麦茶をコップに注ぎ、テーブルの上に出した。 喉が渇いていたのか、「いただきます」…と言い、すぐに飲み干してしまった。 あまりにも美味しそうに飲むので、おかわりを頼まれてもいないのに、また注ぎたくなってしまった。 「時間遅くなっちゃったけど、どうする?今日は帰るの?」 ふと疑問に思った。愁はどうするつもりなのだろうかと。 このまま泊まってもらっても構わないと、私は思っている。 「泊まっても大丈夫か?大丈夫なら、今日は幸奈ん家に泊まりたい」 こんなに必死な愁は初めてで。そんな愁に私はドキドキしている。 「男の子でも、夜道は暗くて危ないから、泊まってくれた方が安心だよ。 お布団はお客様用のがあるから、それを使って」
/346ページ

最初のコメントを投稿しよう!

337人が本棚に入れています
本棚に追加