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「いいのか?ありがとうな。
それじゃ、お言葉に甘えて、泊まらせて頂きます」
私以上に嬉しそうだった。それもそうか。夜道を一人で帰らされる方が、嫌に決まってる。
いくら男性とはいえども、最近の世の中は物騒だ。
そんな危険なところに、愁を放り出すなんてこと、できるわけがない。
一晩泊まるだけだというのに、はしゃぐ姿が愛おしく感じた。
こんなに好きなのに…。近くに居るのに…。
きっと私達の間に、一夜の過ちは起きない。だって、愁は私が嫌がることを絶対にしないから。
だからこそ、本当は手を出してほしい。私のこと、少しでも女性として意識してるってことを実感したいから。
どう考えても、女友達としか思われていないに違いない。
愁と友情なんて成立させたくない。私を早く愁の彼女にしてほしい。
もう何回考えたことだろうか。一緒に居る時間が長くなればなるほど、愁と離れてしまうことが怖い。
花火大会に一緒に行ったあの日…。勇気を出していれば、今頃何か変わっていたのかな?
そしたら、この状況がお泊まり会ではなく、お泊りデートになっていたかもしれない。
そうなっていたらよかったのにな…なんて思った。
「それじゃ、そろそろ遅いし、寝よっか」
お客様用の布団を取り出して、寝室に運び、床に敷くために、押し入れから布団を取り出した。
その時、愁がさり気なく、「俺が運ぶ」と言い、代わりに布団を運んでくれた。
さり気ない優しさに胸がズキン…と痛んだ。深い意味がないことは、よく分かっているつもりだ。
それでも、女の子扱いしてくれたことが嬉しかった。
寝る準備も整ったので、「おやすみ」と言い、電気を消した。
暗くなった途端、沈黙が流れ始めた。気まずい。この空気に上手く耐えられるかな?
愁は寝ているかもしれないから、今は話しかけるのは止めておこうかな…なんて、思った矢先のことだった。
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