番外編:片想い~愁の彼女side~

6/8
310人が本棚に入れています
本棚に追加
/346ページ
でも、それができなかった。答えを知りたくない。きっと今よりもっと傷つくことになるかもしれないから。 まだ告白するわけでもないのに、私の胸はザワついていた。 今思えば、きっとこの時からなんとなく察していたのかもしれない。 だから、私は怖くて逃げ出したのだと、今になってようやく分かったのであった。 しかし、この時の私はこの先に何が待ち侘びているのかなんて、まだ分かっていなかったので、この違和感を解消したいという思いの一心で、結局、あのコンビニへ足を運んでしまった。 こういう時に限って、彼が居た。会いたい時は会えないのに、会いたくないと思った途端に会えてしまうなんて…。 しかも、この間、呼び捨てにしていた彼女までいる。 呼び捨てにし合うことなんて、よくあることだ。 私だって、クラスメイトの親しい異性のことを下の名前で呼び捨てにするし、逆に呼び捨てにされることもある。 苗字で呼ぶよりも、下の名前の方が呼びやすい人もいる。 きっと彼のことを皆、下の名前で呼び捨てにしている可能性だってある。 何度も心の中で言い訳を繰り返しても、余計にモヤモヤするばかりだった。 やっぱり、もう諦めて帰ろうとしたその時、私は見てしまった。彼が彼女のことを愛おしそうに見つめているのを…。 それから私は、すぐに走り出していた。胸が苦しくて上手く息ができない。 やっぱり、コンビニになんか行かなければよかった。 最初から運命なんて、簡単に信じなければよかったんだ。
/346ページ

最初のコメントを投稿しよう!