2章:一番になりたい

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           ◇ 「幸奈、今日はどうしても送ることができない」 バイトの休憩中、愁から突然告げられた。ついにこの日がきてしまったみたいだ。これでようやく諦めがつくかもしれない。 「うん、分かった。私は大丈夫だから、気にしないで」 涙を堪えるのに必死だった。笑顔で耐えるしかなかった。 「悪いな。彼女と一緒に帰る約束しててさ。 …親に内緒で、泊まりなんだ。俺ん家で」 もう二人の仲は、そこまで進んでいるみたいだ。 一夜を共に過ごすなんて、絶対にやることをやるに決まってる。 そんな二人の姿を想像するだけで、胸が破裂しそうになった。 そんな想いを隠すために、「いいなー…楽しんできてね」なんて、曖昧な返事をしてしまった。 「あぁ、悪いな。代わりに違う奴に頼んでおいたから」 代わりなんていらない。彼女と一夜を明かすくらいなら、私と一緒に居てよ…。 メラメラと沸き上がる嫉妬。日に日に熱く燃え上がっていき、抑えることなんてできなかった。 「ありがとう。わざわざ私のために…」 「当然だろ。大切な友達だからな」 友達…。本人からそう告げられてしまうと、もう諦める以外、方法はなかった。引導を渡されたも同然だ。 「そうだね。ありがとう。夜道は暗いし危ないから、誰かが傍に居てくれると助かる」 女の子扱いしてくれるけど、あなたの目には映らない。それは私にとって、とても残酷なことだった。 心が痛い。今すぐにでも、涙が零れ落ちそうになった。 「安心しろ。次はちゃんと俺が送るから」 頭をポンポンと撫でられた。これは愁の癖だ。触れられた部分が熱を帯び始める。 どうしよう。諦めなきゃいけないのに、益々好きになってしまうだけだった…。
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