2章:一番になりたい

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あの時、愁は私に、「幸奈はどう思う…?」って聞いてきた。 そっか。愁はあの時、私に引き止めてほしかったんだ。私に好きだって言ってほしかったんだと、今更になって気づいた。 「…大平さん?どうかした?」 黙って俯いている私を心配してくれた。 これ以上、迷惑をかけるわけにはいかないので、精一杯の勇気を振り絞って、元気なフリをした。 「何でもない。全然大丈夫だよ!それにしてもびっくりした。そっか、そうだったんだ…。全然、愁の気持ちに気づいてなかったよ。 もう。それなら愁も早く言ってくれればよかったのに。 …って、もう彼女がいるから、今更遅いか」 空元気だった。これじゃ、誰でも私の気持ちに簡単に気づいてしまう。今更、誤魔化すことなんてできなかった。 「どうやら、余計なお世話だったみたいだね。でも、何故か今の愁が寂しそうに思えたんだ。俺の気のせいならいいんだけどね…。 大平さんなら、愁の孤独を救えるかなって思ったんだけど、今更ごめんね。出過ぎた真似を」 中山くんに罪はない。誰かのために行動するのって、凄く勇気がいることだと思う。 自分のことでも尻込みしてしまう私とは違い、ちゃんと向き合って、自分のやるべきことをやる姿は尊敬に値する。 「気にしないで。教えてくれてありがとうね」 嬉しそうに笑う愁を、彼女から奪うなんてこと、私には到底できそうにはなかった。 中山くんは中山くんなりの目線で、私は私の目線で愁を見ている。 たとえ不器用だと揶揄されても構わない。もう私にやれることなんてないのだと、身に染みている。 もしかしたら私は、今更こんなことを聞いて、まだ期待してしまっている自分を、罰したいのかもしれない。 「そっか。それならよかったよ。 それでさ……、」 気まずい空気を変えるために、話題が転換された。 中山くんに気を遣わせてしまったことに、私は後悔した。 あれから、中山くんはあの話題に触れてくることはなく、無事に私を家まで送り届けるという役目を果たしてくれた。 最後はバツが悪そうに、 「今日、俺から聞いたことは、愁には内緒にして。俺が勝手にやったことだから」…とだけ言い残して、去った。
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