1章:ずっと一緒だと思っていた…

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「あの…えっと、岩城くん、よろしくお願いします」 初めて彼と一緒に帰るので、緊張している…。 こんな偶然、店長のお陰だ。延長してくれてありがとうございます…。 「うん。任せて。…初めてだね、一緒に帰るの」 首を縦に頷くことしかできなかった。私はあまりの緊張で、上手く喋れなかった。 そんな私を察してか、岩城くんは気を遣って、たくさん話しかけてくれた。 「大平さん、俺と近所だったんだね。 …ってことはここから家、近いの?」 「あ、うん。近いよ。だからここにしたのもあるの」 いつもより暗い夜道。街灯がついているが、やっぱり少し時間が遅くなるだけで怖いなと思ってしまった。 「そっか。実は俺も。大平さんはどこに住んでるの?」 岩城くんの方から興味を持ってくれることは少なかった。 いつも会話を広げようと、私が勝手に必死になっていたのもあるが、こんなに質問攻めしてくる彼は初めてのことだった。 「えっと…、サンパレスっていうアパート知ってる?」 その単語を聞いた途端、彼の表情が一気に変わった。 どうやら、岩城くんは知っているみたいだ。 「知ってるよ。俺、そこのアパートの向かいに住んでるから」 どうしてこんなにご近所さんな上に、同じアルバイト先で働いているというのに、今まで一度も遭遇することがなかったのだろうか。不思議なこともあるものだ。
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