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ジャスミンのハンドクリーム
ふにっ。
またこの感触。
柔らかく潰されてしまうのは、いつも私の方。
瞼をあげると、少しだけ寂しさを混ぜて笑った顔がある。
私の唇を押さえていた人差し指を離し、美月センパイは小さく鼻を動かした。
「バニラ?」
またしても作戦失敗。
私はバニラの香りのリップクリームを塗った口の先を尖らせて答える。
「……正解です」
一度離れた美月センパイの細い指が再び近づいてくる。
思わず首をすくめた私の眉間に触れ、「シワ寄ってるよ」と今度は声を弾ませて笑った。耳の奥で柔らかく響く美月センパイの声に、私は表情を緩めるしかなかった。
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