であう

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であう

 まもなく、せんだい、仙台……。  新幹線の中は東京駅を出発してから、何も変わった様子はない。それでも、いつの間にやら俺の座る【 12-A 】は、仙台の地に脚を踏み入れている。仕事の疲れとアルコール分が、俺に微睡みを寄越していたらしい。  扉が開くと牛タンの匂い。は、流石にしないものの、単に凄然とした都会の空気とは明らかに異なっていた。少しひんやりとした風が、俺に纏わりつく『汚れ』みたいなものを吹き落としてくれる。  婆ちゃんや爺ちゃんと過ごす時間にも、似た効果がある事を俺は知っていた。  いつもの駅前ロータリーでは、多くの車が規律を乱さずに輪を描いていた。囲まれた島は、小規模の駐車場となっている。そこの隅を陣取るのが爺ちゃんは好きだった。  俺が周回する車を気にしながら近づくと、かなり年季の入ったファミリアが挨拶代わりのハザードを灯した。  後部座席のドアから、ひょいっと顔を覗かせてみる。 「爺ちゃん、久しぶり」 「よく来たな。荷物と一緒にうしろ乗れ」  運転席の爺ちゃんは顔を正面に向けたまま、随分と薄くなった白髪だけを俺に見せた。  相変わらず、素直じゃない性格。でも、頑固という表現は似つかわしくない。俺が車に駆け寄る姿を懸命に探していた絵が浮かんで、自然と笑みが零れた。 「運転、代わろうか」 「いい。今日も仕事だったんだろ」  爺ちゃんの嗄れ声は、会う度その渋みが増している。ハンドルを握り込んだ手の甲には、皺と血管が恐いぐらいに浮き出ていた。  婆ちゃんと二人揃って改札口まで迎えに来てくれていたのは、遠い昔の記憶だ。
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