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空の上には神様の住まうお宮がありました。ヒノキでできた立派なお宮のな中で、男の姿をした神様が文机に向かい書き物をしております。
硯から立ち上る墨汁の香りは、先ほどすったばかりのもの。白い筆の先は黒くぬれており、白い和紙の上をすべっていきます。
一息入れようと神様は立ち上がり、すだれをあげると雲を通して下界を眺めておりました。
「あっ!」
すだれを上げたとたん、ざあっと風が吹き抜けていきます。つやつやとした黒髪が揺れ、神様のお袖にくっついていた真っ白な和紙一枚が、ひらひらと飛んでいきました。
神様は急いで和紙を掴もうとしましたが、神様の手をすり抜けて下界へと降り立っていきます。
神様は和紙一枚の行方が気になりましたが、たまっていた仕事を片付ける方が先だと文机へと戻りました。
もう少ししたら神様が書き終えた書類をもらいに、使いがやってくるのです。
神様は気になりながらも、せっせせっせと筆をすべらせ白い紙に黒い文字を埋めていきました。
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