光の道標

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 皆で歓談しながらの食事は、その内容が何であれ美味しく感じるし、楽しい。今朝作ったお弁当の残り物だというのに、慧とオウルはあっという間に綺麗さっぱり完食してしまった。 「ごちそうさま~! お弁当、いいね! めちゃくちゃ美味しかった! ありがとう、蛍ちゃん」 「はい! また食べたいです!」  慧もオウルもご満悦といった感じで、蛍も嬉しくてたまらない。  オウルはすぐさま人の姿になり、蛍がお弁当を入れてきた容器を洗い始め、ついでに湯を沸かす。食後のコーヒーの準備だ。  蛍はそれらをオウルに任せ、慧とともにリビングのソファで寛いでいた。その時、蛍の携帯がぶるぶると震える。なんだろうと思って画面を確認すると、相手は知佳だった。 「知佳?」 「お礼の電話じゃない?」 「そうかもしれないですね」  蛍もそう思い、笑顔で電話に出る。だが、聞こえてきた第一声は──。 『助けて、蛍!』 「知佳!?」  蛍のただならぬ様子に、慧は僅かに眉を顰める。オウルも何かよからぬ気配を感じたのか、用意していたコーヒーを引っ込め、そのままリビングに入ってくる。 「知佳! どうしたの!?」 『亘輝、亘輝が!』  知佳らしくなく、すっかり我を失っているという感じだ。蛍は必死に知佳を宥め、何とか事情を聞き出す。そして、顔面蒼白となった。 「知佳、今からそっちに行くから。住所をメッセージに入れておいてもらえる?」 『遠いよ? 大丈夫? 来てくれる?』 「うん、行くから。だからそれまで頑張って」 『わかった。何とか押さえてみる』 「あんまり無理はしないで。怪我しないようにね」  そう言って電話を切る蛍の肩をポンと軽く叩き、慧は立ち上がる。 「非常事態だね。話は車で聞くよ。行こう」 「慧さん……!」 「蛍、大丈夫です。一緒に行きましょう」  いつの間にかオウルがフクロウ姿に戻り、蛍の左肩にとまっていた。落ち着かせるように蛍の頬をちょんとつつき、頭をすり、とすり寄せる。  出かける用意をする慧の後を追い、蛍も気持ちを切り替える。二人が一緒ならきっと大丈夫。蛍は頭を振って気合を入れた。 「お願いします!」  蛍の声に慧とオウルが力強く頷く。  エレベーターで地下階の駐車場へ行き、再び三人は仕事用のミライースに乗り込む。まさか再び出かけることになるとは思わなかった。  蛍は携帯で知佳からのメッセージを確認する。知佳からは亘輝の家の住所が送られていた。それを慧に伝えると、慧がすばやくナビをセットする。 「行くよ」 「はい!」  慧はそのまま車をスタートさせた。ナビが最初に示す方向とは違う方にハンドルを切る。しかしもうそんなことで驚きはしない。慧の頭の中にある道路地図で、最短距離でその場所へ行けるルートを取っているのだ。ナビはあくまでも補助。わかる場所までは自分の判断で車を走らせる。  蛍はぎゅっと拳を握り、祈るように目を瞑った。  どうか、どうか、知佳と亘輝が無事でありますように、と──。
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