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窓からはポカポカとした陽射しが入り込み、所内を明るく照らしていた。
テーブルの上には芳しい匂いが立ち昇るコーヒーが置かれ、上質なソファで寛ぐ人物が三人と、フクロウが一羽。もちろん、フクロウはソファで寛いでなどいないのだが。
「蛍ちゃん、楽しい?」
カップを傾けながら尋ねる、とんでもなく容姿の整った男は、英慧。都心に聳え立つ巨大オフィスビルの最上階に位置する「英探偵事務所」の主だ。
蛍はじっと見つめていたタブレットから視線を上げ、慧の方を向く。が、すぐ目に入るのは慧の顔ではなく、真丸い大きな目とモフっとした羽毛だった。
「蛍!」
オウルが嬉しそうに蛍の頬に頭をすり寄せてくる。
応接室にあるソファの奥側には慧が、手前側に蛍が座っており、慧は蛍の左側にいる。そして蛍の左肩にはオウルがいて、ここはオウルの指定席となっているのだ。蛍がいる時は、オウルは大抵ここにいるといっていいだろう。
「ちょっとフクちゃん! 邪魔!」
「邪魔ではありません」
「蛍ちゃんが僕を見ようとしてるのに、フクちゃんが邪魔して見えなくしてるんでしょ!」
オウルはチラリと慧を見遣り、ツーンとそっぽを向く。それを見て、慧がギリリと歯噛みする。
「相変わらずオウルは天羽さんが大好きだなぁ」
「はい!」
「はぁ!? 僕だって大好きだからっ!」
「うわー……」
慧の向かいでちょっと引いた風に苦笑しているのは、椎名翔平。慧の幼馴染であり、よき理解者でもある。彼は、そのほんわかとした見た目からは想像もできないが、なんと警視庁の刑事だ。
広域犯罪対策室という一般には知られていない部署で働いており、普段は他部署の応援やら雑用やらを引き受けている。だがその本業は、迷宮入りしそうな、もしくはしてしまった不可解事件を調査すること。管轄は一切関係なく、守備範囲は全国、実はなかなかに忙しい部署なのだった。
翔平はどうしてだか、インフェクトという謎の人外生物が関わっている不可解事件を嗅ぎ当てる特技を持っている。本人曰く完全に勘なのだそうだが、その的中率は80%を優に超えている。これはもう特技といっていい。そして、このインフェクトが関わる事件のみを扱っているのがここ、英探偵事務所だ。
英探偵事務所は、世間一般の探偵事務所が請け負うような業務は一切やらない。ここは、探偵事務所と銘打っておきながら、探偵業を生業としていない。インフェクトを排除し、インフェクトに囚われた人たちの魂を浄化する、それがこの事務所の本業なのだった。
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