4人が本棚に入れています
本棚に追加
鞄のお守りが一個なくなった。
僕の歳の数――全部で十五個あるはずのスクール鞄につけていたお守りのうち、赤い生地のものがなくなっていた。
朱色に染まった教室で、僕は一人で行方を探す。半ば泣きそうになりながら、ゴミ箱をひっくり返して中身をあさった。お菓子のゴミくず、何を拭ったか分からないティッシュ、テストの答案用紙。
ここではないのだと諦めて、僕はゴミ箱に戻していく。せめて、教科書とかノートにしてくれれば良いのにと僕は思った。
だけどそれを伝えるのは、逆効果だということはさすがの僕でも分かる。それに彼らがやったと認めるとも限らない。逆上されて、もっと酷い目に遭わされるかもしれないと思えた。
教室は一通り探し終えた僕は、ゴミ捨て場に行こうと鞄を手に取る。
廊下に出ようとしたところで、危うく誰かとぶつかりそうになった。
「ご、ごめん」
僕は慌てて後ろに飛び退く。
何故か別のクラスの神藤くんの姿があった。いつもの取り巻きはいないようで、一人のようだ。
「お守り探してんだろ」
神藤くんが淡々とした口調で言った。
僕は驚いて神藤くんの顔をまじまじと見た。僕に話しかけて来たことに対する二重の驚きもある。
「な、なんで分かるの?」
神藤くんの酷薄そうな目が僕をじっと捉え、少しだけ口角を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!