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僕は俗に言ういじめられっ子だし、成績も運動も決して良い方だとは言えない。友達だっていない。こうして自分と正反対の人間と関わりを持てること自体、奇跡に近いのだ。 それに以前から神藤くんは僕にとって、教祖様のような存在だった。生徒会長として壇上に上がったその姿は、後光と人の視線を浴びて、まさしく神託を受けた教祖様のようだったからだ。僕は羨望と畏怖の感情を抱き、その姿を目に焼き付けていた。
そんな僕の感情など神藤くんはお見通しで、だからこそ声をかけてきたのだろう。
神藤くんと関わりが持てたからといって、僕の毎日は変わらない。
休み時間にトイレに行けば、上から水が降ってくる。それを見越して僕は、個室に入る前にブレザーを脱いで、ワイシャツの替えを持って行くようにしていた。
制服が濡れて困ると親に相談したが、いじめは試練の一つだからうまく逃れてこそ、人として成長できるのだと言われ、換えを持たされていたのだ。
人間は悪魔と常に戦い、打ち勝たなければいけない。悪魔に負けて支配されている相手には、一度死んで魂を洗わない限り、何を言っても無駄だという。そうならない為にも、祈りを捧げて、お守りして頂くしかないそうだ。
僕は毎日、父と母と僕の三人で、朝晩とご神体を前に祈りを捧げていた。日曜日には必ず、布教運動や勉強会に家族で参加している。
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