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それでも時々、神藤くんが放課後に現れて、場所を示してくれていた。
神藤くんは、学校行事だけでなく、受験勉強にも忙しいはずだ。駅前の塾に週五で通ってすらいる。本来ならば、僕のことに時間を割く暇などないはずだ。
だからこそ、そこまでしてくれる神藤くんを僕は、目に見えた救いを与えてくれない教祖様よりも、よっぽど信仰に値する人物に思えてならなかった。
一度、神藤くんにどうして、僕を救ってくれるのかと尋ねたことがある。
神藤くんは僅かに笑みを浮かべ、「お前が俺を信じてるから」と言った。
僕はその時、本物の信仰心を得たような気分になった。今までは両親が信仰しているからとか、周りに褒められるからとやっていた。
それがやっと、心の底から感謝と祈りを捧げたいと思えたのだ。
それは僕の人生での大きな指針となり、救いになるように思えた。
「こいよ」
下駄箱の前に佇んでいた僕の所に、神藤くんがいつの間にか現れた。
その時は、僕のスニーカーが下駄箱から消えて、帰れずに困っていた。
いつものように導かれるまま、僕はその背を追う。
元々、僕に対して愛想の良い方ではなかったけれど、いつも以上に、神藤くんの機嫌は悪そうだった。先を行く背中から伝わる妙な威圧感。荒っぽい歩き方に、僕は何か嫌なことでもあったのだろうと推測した。
いつもより多く階段を上がり、たどり着いた先は屋上だった。
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