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「心外ですね!私がそんな罪悪感のために男に靡くとでも?」
「……安城さん」
「私はね、庇われる前から……!」
言いかけてハッとする。
続きの言葉を思い浮かべて、みるみる体を小さくさせた。何を口走ろうとしたんだ、自分は。
見れば藤堂さんはテーブルに肘をついてこちらを見ていた。
「前から、なんです?」
「…………! さては、言わせようとしてますか!?」
「何がですか?」
「なんっでもないです!!」
意地を張ってそう返す私に、藤堂さんは楽しそうに笑った。何が楽しいんだ、何が面白いんだ。この男のツボは分からない。
プイッと横を向いて顔を逸らした私に、藤堂さんが言う。
「凛さん」
「なんですか!」
「あなたは世界一の人です。
あなたが好きです、誰よりも」
「〜〜〜っ」
「顔赤いですね」
「うるさい!」
ああもう。ほんとになんでこうなったんだろう。
こんなはずじゃなかったのに。
恋になんて、落ちるはずじゃなかったのに。
そう思いながら見た正面に座る男は、嬉しそうに私を見つめていて。
そんな顔をみただけで、まあいっかあ、と思ってしまう私は、やっぱりもうとっくに手遅れらしい。
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