僕の愛する君へ

3/27
30人が本棚に入れています
本棚に追加
/27ページ
 僕の家は、けして裕福ではなかった。  父はギャンブルで借金を作り、母は昼も夜も働いていた。母は昼のパートから帰ると、急いで夕飯を作り、夜はスナックに働きに行った。  それをいい事に、父は仕事が終わると閉店までパチンコをしていた。  だから、顔を合わせば喧嘩ばかりしている両親だった。  僕には六つ年上の兄がいる。喧嘩もしたけど、仕事で帰りが遅い両親の代わりに食事を作ってくれたり、勉強を教えてもらったりしていた。  子供の頃から、家にお金がないのはわかっていた。だから僕は、欲しい物があっても我慢した。  友達がゲームの話をしていてもついていけず、学校でも一人でいる事が多かった。放課後も携帯ゲーム機がないと遊びに誘われる事はなかった。  それに、みんなは塾や習い事で忙しいのに、僕の家は習い事なんてさせて貰える余裕がない事はわかっていた。  お金がないだけで、こんなにも惨めな思いをするんだと思い、悲しかった。  兄が高校に入り、バイトを始めてからは、一人で留守番する事が多くなった。  兄はそんな僕の為に、バイト代でゲーム機やソフトを買ってくれた。  僕は嬉しかった。まだ小学生だった僕は、一人でゲームをしながら、兄の帰りを待っていた。              
/27ページ

最初のコメントを投稿しよう!