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その男は、僕の座席の対角線上に座っていた。
教室に入ってすぐ、一番前の右端が僕の席だけれど、真島の席は後ろの左端。一番遠いところだ。
教室にいる時の僕も、きっとこんな感じなんだろう。
真島は休み時間ににぎやかな教室の中で、座って読書をしていた。
まるで何かの修行をしているような真剣な横顔。その本は、そんな風にのめり込んでしまうほどに面白い物語なのだろう。
本の楽しさや素晴らしさは僕にもとてもよく分かる。
「うわ、次テストじゃん!忘れてたぁ最悪ッ!」
「大丈夫だよ、俺全然勉強してないし」
「嘘つけぇ!」
「ハハハッ」
そんな真島の周りには、彼に背を向けて人が群がっていた。
声を上げて騒いでいる連中は、全力で笑ったり悲しんだり驚いたりしていた。
そんな彼らを真正面から見たことがなかった僕は、急に、息苦しくなってしまった。
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