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その日の朝のホームルームは、そんな滑り出しから始まった。
走り出した直後からの記憶がないのだけど、全速力を出した途端、ビュワッと瞬速で移動した僕は、50メートル走にも関わらず200メートルほど先のコンクリートの壁に激突して穴を開け、消えたらしい。
身体が速度に耐えきれなくなったのだろうか。
だから、僕は自分の目がどこで耳や鼻がどこかなんてわからないけれど、教室の中にいた。
どうやら空気の一部――粒子となって、浮遊しているらしかった。
教室を斜め上から見下ろす気分は不思議だった。
人は死んだらこうなるのかな。
悲しいというより、落ち着いていた。
足が速すぎてもダメだってことを学んだ。
仕方ない。来世に期待するか。
どうせだれも悲しんでないだろうしさ。
そう思って教室を出ようとした時、うわぁっと泣く声が聞こえた。
驚いて見れば、早川が泣いていた。
「こんなつもりじゃなかったんだ!」
そう言って立ち上がり教室から走り去る彼の背中を見つめ、僕もそうだよ、と思った。
とりあえず、ついて行ってみることにした。
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