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早川は、鍵のかかった屋上の入り口にもたれかかり項垂れるように座っていた。
鍵は持ってないのか。意外だな……、と見下ろしていると、彼は徐に語り始めた。
「俺は、速水のことを知りたかっただけなんだよ。
本当に足が速くなるなんて、知らなかったんだ。近所の不思議な婆さんが願い事が叶う飴だって言ってたから、つい「足が速くなる飴」なんて名前をつけたけど。本当は、速水のことを知りたくて、仲良くなりたくて、そんな願いを込めてたつもりだったんだよ。
……ごめんな、本当にごめん。
学校に来てくれたら、今度は普通に話しかけるからさ、昼飯でも食べようよ。なぁ、速水……」
うう、と子供のように膝に顔を埋める彼。驚きで固まる僕は、じんわり胸が熱くなるのを感じた。
思わず僕はここにいるよ、と背中を摩ってあげたくなった。
彼は僕が消えたのに、また学校に戻ってくると思ってるのかな。また学校に戻れるのかな。
別に、早川のことは恨んじゃいない。
僕が消えた原因と言えばそうなのかもしれないけど、彼にはひどいことをされた記憶はないから。
でも、僕が戻ったとしても、君には木城がいるじゃないか。
「おーい早川〜」
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