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彼こそは責任を感じているのだろう。
まさか自分の授業で、人が消えるなんて。もはやそんなの超人現象であり彼の手に負える物ではないと思うけど。
彼はしばらく茫然と空を見上げた後、気怠げにポケットからスマホを取り出した。
そして、僕はまたしても見てはいけないものを見てしまった。
「あーん、癒されるわぁー!
ユキリン今日も鬼カワユイ〜!ラブッ!!」
どこから出るんだというような甲高い声を出すと、スマホの待ち受けに向かって投げキッスをしていた。
肌なんてないけれど、全身が鳥肌が立ったようにぞわりとした。
率直にキモいと思った。
なんだその声は。なんだその表情は。なんだその仕草は。
僕の知ってる佐熊先生はどこだ。
「あーっ!ここにいたんですねぇ」
よく通る聞き覚えのある声がしたと思ったら、保健室の美波先生だった。
「ウホッ!美波先生!今日もお綺麗ですね!」
確かに美波先生はその待ち受けのアイドルに似ているけれど。
目をハートにしてモジモジしはじめた先生は、やっぱりちょっと気持ち悪い。いや、かなりキモい。
「あれ、落ち込んでるかと思ったんですけど」
その言葉に、ハッと思い出したように顔を曇らせた佐熊先生は、空を仰いでゆっくりと口を開いた。
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