時は青春なり#5

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 隣りの席の人が、カッコいい。  クラス発表のあとに、指示された席に座っていたら、あとから入ってきた男子生徒に心奪われた。  大人びた顔立ちで、すらっとした背の高さはまさに少女漫画から飛び出したかのような憧れの男子像。  私の中で、瞬時に直視が困難の枠に入った人がまさかの隣りの席に座るなんて、神様はなんて残酷な試練を与えたのか内心嘆いた。  知り合いがいないクラスの中で、浮く私。  自己紹介で、隣りの王子様の名前を知る。  中村太一君。    順が回ってきて、私も自己紹介するのだが、みんなの視線(特に女子)は私より、隣りの王子様を見ていた。  前に座る本田美奈さんと親しげに話す様子を見ると、同じ中学校の知り合いと分かるものの、それ以上の仲なのかなと見当(けんとう)したりしている。  いつもの授業。  王子は退屈して、机に突っ伏している。  私もこの授業は少々退屈だけど、近々控えているテストの為に頑張っているに過ぎない。  休み時間も、話す相手もいなくて、その寂しさを紛らわすのは読書に限る。    今ちょうど本の中では、奇怪な殺人事件の犯人が分かる所で、ページをめくる手が止まらない。  犯人は……。 「今日は、続きのページからだ」  ヤバいっ。すっかり授業が始まってることに気付いてなかった。次の授業って科目何だっけ。  先生の顔をみて担当の科目を把握して急いで授業の体勢を作った。  あぁ、恥ずかしい。  隣りの王子に見られている視線を感じる。  私の無様な格好をみて、笑ってるんだわきっと。  顔が熱くなってるのが分かる。  先生の授業を聞いている振りをしながら、冷静さを取り戻し始めた時、床に消しゴムが落ちているのが視界に止まった。  多分、本田さんの消しゴムだと思って、声を掛けたんだけど、まさかの王子の消しゴムだったとは。  もし、私が直接渡していたら、王子の顔を直視する流れになるから、それはそれで避けられる事態で良かったかもしれない。 
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