『魂喰い』という存在について

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『魂喰い』という存在について

俺には双子の弟がいる。 見た目そっくりの俺達だが、されど決定的な違いがある。 弟は『魂喰い(たまぐい)』なのだ。 魂喰いとは何か。 実はまだよく分かっていない、謎の存在らしい。 現在確認されているのは世界中に数十から数百人程度。 しかしそれと知らずに生きている者も多く、実際はさらに数が増えるのではないかと研究者たちは考えている。 なお、魂喰いに関して世間一般ではほとんど何も知られていない。 正確には知らされてない、だ。 『魂喰い』とはその不気味な言葉通り、人の魂を食べることを意味している。 そもそも魂とは何か、といった哲学や宗教的な議論はさておき。 魂喰いと呼ばれる人達にはどうやら他人の生体エネルギー(のようなもの?)を吸収することが可能らしい。 それが病気なのか進化した特殊能力なのか、詳しい事はまだ研究段階であり不明だが。 それゆえ恐怖の対象になりうる彼等の存在は、混乱や迫害を避けるため極秘扱いとされているのだ。 ――などと、小難しい説明されてもピンと来ないよね。 だけど嘘じゃないから。 弟が魂喰いなのは本当のことだし。 その証拠に今現在、俺、喰われてるし。 「あ、あぁ……っ……ァん、く……」 「はあ、兄貴のやっぱ、最高」 衣服は(当然)身につけたまま、向かい合う形で座る俺達二人。 互いの指を絡ませるようにつないだ手が、やけに熱い。 いや違う熱いのは全身。 沸騰して、どこもかしこも溶けそう。 同時に凍えそうなほど冷たい。 繋いだ指先からスーッと、身体中の血が抜き取られているのでは? そんな錯覚をしてしまう。 生体エネルギーとやらを喰われる時はいつもこうだ。 熱くて冷たくて、総毛立つように痺れて、頭がおかしくなりそうなくらいに気持ちいい。 まあ、たまに良すぎて本当は少し怖かったりもするけど。 特に今日のは何かちょっと、ヤバイ。 「お、前……喰い、過ぎ……!」 「ああ。だって今日さ、実験とか言われて。虫やねずみのエネルギー、喰わされたんだよ? 気持ち悪っ、しかもマズイし最悪。だから口直しに、ね?」 .
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