『魂喰い』という存在について

2/2
28人が本棚に入れています
本棚に追加
/7ページ
「知る、か……ひッ……やぁああー!?」  *** 俺は怒っている。 恥ずかしいんじゃない、腹を立てているんだ。 「なー兄貴、悪かったってば。機嫌直してよ」 「うるさい触んな!」 肩に触れようとした弟の手を叩き落とす。 何が口直しだ、馬鹿。 おかげで俺のプライドはズタズタじゃねーか。 「えー? でもさあ別に今更だろ。実の弟に魂喰われたら気持ち良すぎてイっちゃった、なんて」 「い、言うなよ馬鹿ッ!」 「ちょっ、痛い、だからごめんってば。兄貴が空イキするくらい気持ち良くさせちゃって」 「なッ!? お、お前……何で知ってんだよ服脱いでないのに!」 「え~何となく。やっぱ双子だから?」 「馬鹿ぁああーッ!」 魂喰いについての補足。 生体エネルギーを喰われる対象は『餌(え)』と呼ばれている。 弟にとっての餌は、もっぱら俺だ。 多分、幼い頃より一番身近にいて便利だったからなんだろうけど。 吸血鬼みたいに噛み付くわけじゃなし、ただ軽く手を繋ぐだけでコトは済む。 特に痛みもないから、俺は数分じっとするだけ。 ただし弊害もある。 普通なら喰われる際に少し高揚感を覚える程度なんだけど。 たまに弟が飢えていたり、がっつき過ぎた時なんかはシャレにならない現象が起こるのだ。 ――つまり、『気持ち良すぎてイっちゃう』という生き恥地獄が。 な に そ れ 。 事情を知らない人が傍から見たら、双子の弟相手に俺が一人で興奮したみたいな。 それじゃまるで変態……。 嫌ぁぁあッ! ち、違うからね。俺は変態じゃないよ。 魂喰いに喰われると皆こうなるんだから。 気持ち良くても仕方ないんだってば! 「あ。それと来月の実験は兄貴も一緒だから伝えといてね、って所長が言ってたよ」 「…………は?」 ニヤリと笑う弟。 瞬時に青ざめる俺。 表向きは違う名前なのに、所長自らが「魂喰い研究所」と呼ぶ政府の施設。 偶然が重なり、今やそこで保護および観察・実験協力対象となっている弟。ついでに餌である俺。 二人一緒ということは、いつもの簡単な健康診断だけじゃ……ない? え、それはつまり。 「研究所の皆が見ている前で、今度はイかないように頑張ってねー兄貴」 「ぎゃあぁぁあああ!?」 お願いです神様、どうか一刻も早く『魂喰い』の治療方法を教えてください。 それもなるべく絶対、今月中に! 【第一話・END】
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!