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「知る、か……ひッ……やぁああー!?」
***
俺は怒っている。
恥ずかしいんじゃない、腹を立てているんだ。
「なー兄貴、悪かったってば。機嫌直してよ」
「うるさい触んな!」
肩に触れようとした弟の手を叩き落とす。
何が口直しだ、馬鹿。
おかげで俺のプライドはズタズタじゃねーか。
「えー? でもさあ別に今更だろ。実の弟に魂喰われたら気持ち良すぎてイっちゃった、なんて」
「い、言うなよ馬鹿ッ!」
「ちょっ、痛い、だからごめんってば。兄貴が空イキするくらい気持ち良くさせちゃって」
「なッ!? お、お前……何で知ってんだよ服脱いでないのに!」
「え~何となく。やっぱ双子だから?」
「馬鹿ぁああーッ!」
魂喰いについての補足。
生体エネルギーを喰われる対象は『餌(え)』と呼ばれている。
弟にとっての餌は、もっぱら俺だ。
多分、幼い頃より一番身近にいて便利だったからなんだろうけど。
吸血鬼みたいに噛み付くわけじゃなし、ただ軽く手を繋ぐだけでコトは済む。
特に痛みもないから、俺は数分じっとするだけ。
ただし弊害もある。
普通なら喰われる際に少し高揚感を覚える程度なんだけど。
たまに弟が飢えていたり、がっつき過ぎた時なんかはシャレにならない現象が起こるのだ。
――つまり、『気持ち良すぎてイっちゃう』という生き恥地獄が。
な に そ れ 。
事情を知らない人が傍から見たら、双子の弟相手に俺が一人で興奮したみたいな。
それじゃまるで変態……。
嫌ぁぁあッ!
ち、違うからね。俺は変態じゃないよ。
魂喰いに喰われると皆こうなるんだから。
気持ち良くても仕方ないんだってば!
「あ。それと来月の実験は兄貴も一緒だから伝えといてね、って所長が言ってたよ」
「…………は?」
ニヤリと笑う弟。
瞬時に青ざめる俺。
表向きは違う名前なのに、所長自らが「魂喰い研究所」と呼ぶ政府の施設。
偶然が重なり、今やそこで保護および観察・実験協力対象となっている弟。ついでに餌である俺。
二人一緒ということは、いつもの簡単な健康診断だけじゃ……ない?
え、それはつまり。
「研究所の皆が見ている前で、今度はイかないように頑張ってねー兄貴」
「ぎゃあぁぁあああ!?」
お願いです神様、どうか一刻も早く『魂喰い』の治療方法を教えてください。
それもなるべく絶対、今月中に!
【第一話・END】
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