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凪と航(仮)
(※弟/航・視点)
俺は『魂喰い』と呼ばれる……化け物だ。
人や、その気になれば動物や虫、植物からも生体エネルギー(命)を奪うことが出来る。
いつからそうなのかは分からない。物心つく頃には呼吸するように無意識のまま奪っていたようだし。
多分、生まれつき『魂喰い』なのだろう。
だが幼い頃は違和に気付けず、自分を普通の子供だと信じて疑わなかった。
俺には双子の兄がいる。
二人は赤ん坊の頃から常に一緒で、遊ぶ時はもちろん食事から入浴、就寝時に至るまでほぼ片時も離れることが無かった。
引き離した途端に俺がぐずる為、両親も無理やり二人を離そうとはしなかったようだ。
一卵性でそっくりな筈の双子の兄弟。
しかし成長するにつれ何故か兄の凪だけ発育に遅れが目立ち、度々体調を崩し寝込むようになった。
原因不明の栄養失調。極度の衰弱状態。
診察をした医者からは子供への虐待を疑われる両親。
それが俺のせいだと気付いたのは、凪の命がこの世から完全に消えてしまう寸前だった。
いや、実際にはあのとき入院先の病室で凪の心臓は止まり、医者も死亡を確認していた。
けど俺は信じなかったんだ。
だってまだ消えてない。俺にしか視えない凪の『命の火』がまだ微かに揺らめいていたから。
(ねえ、皆どうして嘘をつくの。凪はまだ生きてるのに。あの綺麗な火もちゃんとあるよ。だけど早くしないと消えちゃう!)
既に呼吸は止まり、青白い姿でベッドに横たわる小さな兄。
大人たちの静止を振り切って駆け寄った俺はその体にしがみついた――。
あの後のパニックぶりは凄まじかったな。
目の前で死んだ筈の子供が生き返り、ずっと原因不明だった衰弱状態まで治って数日後には退院。
両親は泣いて喜ぶし、病院側は「これはもう神の奇跡としか……」なんて非科学的なことを言い出す始末で。
当の本人も何が起きたのかまったく理解してなくて、ただ元気になれたことを素直に喜んでいた。
退院してからますます離れるのを嫌がる俺に、両親は
「大好きなお兄ちゃんがいなくなるんじゃないかって不安なのね」
「それに凪が今生きてるのも、きっと航があのとき必死にしがみついて、あの世に向かう凪の魂を連れ戻してくれたおかげだな」
と目を潤ませながら微笑むばかり。
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