凪と航(仮)

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だけど、俺だけが知っていた。 凪は俺のせいで本当に死ぬところだった。 謎の栄養失調による衰弱は、ずっと俺に喰われ続けていたから。 『命の火』が枯渇して、凪はこの世から完全にいなくなってしまうところだったって。 ……俺は凪を助けたくて、しがみついた際に自分の『命の火』を分け与えたんだと思う。 そんなことが出来るなんて知らなかったし、もっと早く気付いていれば凪を苦しめずに済んだのに。 まだ幼かった俺は自分が『魂喰い』だって知らなかったけれど、猛烈に反省した。何よりも大好きな双子の兄、凪を失う恐怖が常に俺を不安にさせた。 だから片時も離れたくなくて、少しでも凪の『命の火』が弱まれば俺のを分け与えるようになった。絶対に奪わない。でもたまにうっかり奪ってしまったときは、それ以上の量を返す。 そのおかげか、凪は今までが嘘みたいに元気な子供に生まれ変わった。それに気付いて俺はようやく「良かった、やっぱりこうするのが正しかったんだ」と安心したんだ。 代わりに少しずつ、俺は体調を崩すようになっていった。 ご飯はちゃんと食べている。なのにどんどん衰弱する一方の俺。まるで以前の凪みたいだ、と両親も凪も心配してくれる。 ついには倒れて起き上がれなくなり、かつて凪がいた病院に俺も入ることとなった。けれど医者はやっぱり首を傾げるしかなくて。点滴をしても栄養不足は解消されない。俺の体は弱まるばかり。 ――このまま死んじゃうのかな? 薄っすらとそう考え始めた頃、突然「政府関係の者です」という怪しい黒スーツ姿の大人が家族に接触して来た、らしい。 熱で意識が朦朧としてる間に俺は謎の施設に運ばれて。 次に目が覚めると、白衣のマッドサイエンティストみたいな奴がガラス越しに覗いてた。今思い出しても滅茶苦茶怖かったわ、あれ。 そのマッドサイエンティストが、俺の命の恩人で『魂喰い』研究所の『所長』だったわけだが。 当時、俺にも難しいことはまだよく分かんなかったけど。とにかく俺が世界的にも特殊な病気持ちで、政府が秘密裏に保護及び研究をしている存在だということ。 あまりにも報告例が少なく、研究施設内での非常に特別な治療でしか助からない。 .
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