徳川的詩集

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否恒常的        誰かが『死にたい』と言っている時、他の誰かが『生きたい』と言っている。  誰かが今日も変わらない安心を感じている時、他の誰かが昨日と違う世界に迷っている。  誰かが優越感に舞い上がっている時、他の誰かが劣等感に押し潰されている。  北で産声があがったら、南で悲しむ声が聞こえだす。  夏に輝くあの海も、冬には冷たく突き放す。  朝には綺麗な空気も、夜には世の悪を吸い込んで淀んでいく。  私が普通に生きている今、必死になって生きている人がいる。  私が前を向いて笑っている今、下を向いて泣いている人がいる。  私が未来に想いを馳せている今、過去に捉われている人がいる。  これは、忘れてはいけないもの。  これからもずっと、続いていくもの。    生きよう、否恒常でつくられているこの世界。
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