日本帝国恋愛譚

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そこから出掛けるまで、少し時間があったので私の普段の日課であった、新聞を読む事にした。新聞の見出しには、「普通選挙法成立」と書いてあった。今まで選挙権が与えられていたのは、『直接国税十五円以上を納めている満二十五歳以上の男子』だけだったけれど、新しく制定された普通選挙法の選挙権は、『満二十五才以上の男子』に与えられている。つまり、納税額に関係なく二十五歳以上の男子は全員、選挙に参加できるようになったのだ。女の私でも、いつか選挙に参加できる様になれば良いのに、と考えていた。  ふと、時計を見るともう、家を出ないといけない時間になっていた。私は風呂敷きを手にとり、中にキャラメルと芥川龍之介の『羅生門』を包んで玄関に向かい、編み上げのブーツを履いた。このコーデも、ハイカラで可愛いと呼ばれている。(でも私はドレスのコーデの方がお洒落で可愛いと思っている。)  
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