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13年前。居籠の夜。
真っ暗でシンとしていた。
睦月九日の夜の事。
摂津国戎社の氏子の町屋は、全て門も戸も堅く閉じられていた。
松を地に向けた" 逆さ門松" が並ぶ町は、まるで森のようだった。
音もしない。
光は夜空の月と星のみ。
その闇を白く動くモノが静かに駆けていた。
戎社の門の前でそれは止まった。
白馬であった。
馬上から白い装束姿の者が、静かに降りた。
その足元には、籠の中で眠る赤子が置かれていた。
白い装束の何者かは、己の左袖を緋色の襦袢ごと引き千切り、
そっと赤子に掛けた。
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